2002年11月A

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11月9日(土)
11/6(水)
朝来ると、病院に戻ったハネやん
が作ったスープが出来ていた
 夕食は、ハネやん姉と則子さんが作った鍋
11/7(木) 旅行初日
ハネやんが入院中なので、ハネやんの病院の近くの川越に行くことに決めた。電車では40分と近い距離。
 13人で西武線に乗る。ハネやんは終点で待っているはず。
 「街」のお客さんの小美野さんが参加。小美濃さんは久しぶりに電車に乗ったという。
 「街」は小さい作業所なので、旅行費用もほとんどないので、昼食はチープな店に入る。天丼「てんや」組
 そば・うどん組は、マリちゃん、ハネやん
姉、則子さん、新カメさん
ギョーザの満州は、ハネやん、ガンちゃん、チューやん、トミタさん
坦坦麺を食べるチューやん  オヤジさんがずっと小美野さんの
世話をしてくれた頼もしかった
徒歩3分の湯遊ランドに到着
 午後1時から、二時間、桑田劇団の大衆演劇を見る。
 初めて大衆劇を見ました。思っていたより面白くて笑っちゃいました (^_^) マリ
 生ビール(中)で酔うフッ君 熱燗を味わう小美野さん
 小江戸・川越の街を散策  うーん、レトロだなぁ。
 人力車を見つけ、「無法松の一生」
のパフォーマンスを思い出した洋平君
 時の鐘で記念撮影  川越では郵便局もレトロ  菓子屋横丁を歩く
 イモ・スティックを食べる  もう夕方だ〜ぁ  一風呂浴びて宴会場へ
 フッ君・洋平君・ヨッシー・トリオで〜す。    オヤジ・ファッション
 食べきれないほどの上品な料理と酒2時間飲み放題で、バーボンでした
 ゴキゲンな小美野さん  「矢切の渡し」で日頃の
カラオケ研究会の腕を披露。
オヤジさん「赤いハンカチ」を赤い
ハンカチを持って熱唱
 「池上線」は則子さんの18番だが
電車の歌は誰にも唄わせない洋平
 ガンちゃん  「恋の季節」 
トミタさんとチューやん
 「チャンピオン」の新カメさん 「雪国」 マイクを奪い合って唄う
おなじみ洋平君&ハネやん
快速急行に乗れて良かった。正月に
ジュゴンの飴細工を作ってくれた人が
居なくて残念でした。ハネやんと一緒
に「雪国」を唄いました。洋平君
 もう、どうにも止まらない小美野さん
 フッ君、小美野さん、オヤジさん   マリちゃんはアンルイスの歌。「ヨッ
シーとジュゴンの家」で唄うよりうま〜い
ハネやん&則子さんは
お決まりの「浪花恋しぐれ」。
来年、この歌を唄えることやら。
 カラオケでは、皆さんの歌を聞いて、
普段では見られない部分もあり、とても
楽しかったです。 ゆっくり休めて楽しい
ひと時でした。たまには いいですねー
 マリ


ハネやんと則子さんが歌った唄がとて
も印象的だった。「街」の未来のため
にもいつまでもデュエットを続けてくだ
さいと言いたいのだ。自分の唄は失敗
だらけで30点ぐらいでした。オーヤジ


飲み放題だつたのでビールやウイスキーを飲みすぎて酔っ払い9時前に寝てしまった。 ヨッシー
 最後はマリ&サギリ。Winkの「恋する熱帯魚」  全然、元気なハネやん。この後
12時近くまで飲んでました。

11/8(金) 旅行二日目
 
二日目は、帰って店を開ける組と観光組に分かれ・・・
 粋な天麩羅屋と粋じゃない猫 お洒落な塔が立っていた
うなぎ屋の前で記念写真  あれに見えるは川越大師・喜多院
 お願いをする人たち  長生き・病気になりませんように、世界一長寿を願う小美野さん
 菊まつりをやってました
 武蔵関駅
 午後、イラクの子供たちを守ろうのアピール
夕食はカレーの日


暴力(DV)自衛官を許すな!
 専用ページができました。下をクリツクして下さい 
http://www.geocities.co.jp/EpicureanTable/6597/dv.html
 このホームページは、先日、自衛官によって破壊されました。
同じアドレスには、
全国の人たちから寄せられた医療観察法案・保安処分反対の貴重な資料が掲載されていましたが、それもすべて壊されました。女性の敵であるだけでなく、保安処分推進ための意識的な攻撃だと言えます。この自衛官は治安担当でもあります。別の場所に自衛官の所属部隊・実名などを公表し作成しましたので、読みたい方は、メールでその旨をお知らせ下さい!

「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議事務局からのアピール
 「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議事務局です。今臨時国会で審議が始まろうとしている保安処分新法に反対するこの間の闘争の報告と、11・19行動の呼びかけをさせていただきます。

 11月4日秋晴れの休日、「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議は昼、渋谷駅ハチ公前でビラまきをして保安処分新法の廃案を訴えた後、宮下公園で「保安処分新法を廃案へ!」集会を開き、全国から70名が参加しました。「オープンスペース街」の仲間による歌と演奏も大いに雰囲気を盛り上げてくれました。

  集会は阻止共闘の仲間の司会で始まり、各地で闘う病者・障害者の仲間や精神科医らが次々に発言し、闘いの報告と保安処分新法を許さない決意が述べられました。

 その後デモに出発。デモは休日でにぎわう渋谷の町を「保安処分反対」「保安処分新法を阻止するぞ」「病者差別を許すな」「新法を廃案に追い込むぞ」とアピールしながら進み、渋谷駅周辺を一周して宮下公園に戻って解散しました。

 5日は11時半から衆院議員会館前に横断幕を掲げて座り込み、ビラをまきながら、スピーカーによる情宣を行いました。国会議員や秘書も通り、私たちの行動に注目していました。

 3月に国会上程された保安処分新法=「心神喪失者等医療観察法案」は病者への差別・排外主義に貫かれた保安処分そのものです。阻止共闘は国会上程の動きがあった1月以降、10数回に及ぶ対国会闘争を行い、集会・デモ・学習会・ビラまき・抗議はがきなどの行動を重ねてきました。また全国各地の患者会を中心とした集会・ハンスト・ビラまきなどの闘いの広がりによって先の国会での新法
の強行採決・成立を阻止することができました。

 しかし新法は10月18日から始まった臨時国会に継続審議となっており、法務省や厚生労働省は何としてでも成立させようと現在水面下で、対案を出した民主党や反対している精神科医の団体の切り崩しに奔走しています。具体的には役人が「論点整理」と称して民主党案とのすり合わせをしながら修正案協議を進めているのです。しかも厚生労働省の役人は今国会で新法が成立しないと精神保健
関連予算が出なくなるなどと圧力をかけているとも言われています。こういう卑劣な切り崩しの結果か、精神医学講座担当者会議と国立精神療養所院長協議会が反対声明を出していた精神科医の団体から留保付きで後退するなどの動きが出ています。まさに今が正念場です。

 このような状況をふまえて阻止共闘は11月19日(火)午前9時から国会前で法案の廃案を訴える行動を行います。ぜひ皆さんの参加を呼びかけます。

◆11月19日(火)午前9時から午後3時まで

 ◆衆院第1議員会館前にて
  (地下鉄「国会議事堂前」下車1分、または「永田町」下車5分)

 保安処分新法(心神喪失等医療観察法案)の委員会審議が入るかどうかは未定ですが、法務省と厚生労働省が何としても法案を成立させようと水面下で対案を出している民主党との修正案協議を進めています。修正案が決まれば国会で一挙に法案が成立する可能性はあります。もちろん与党の強行採決もありえます。この時期だからこそ緊急に国会行動が必要です。

 当日は法案の廃案を訴えて、ビラまきとスピーカーでアピールを行います。同時に議員会館を回り各党・議員に廃案を訴えます。一人でも多くの皆さんの参加を呼びかけます。
        

                   「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議
             連絡先  東京都港区新橋2−8−16 石田ビル

                       救援連絡センター気付
                     (03)3591-1301    FAX (03)3591-3583

11月6日(水) 

昼食は、鮭のホイル焼き 久々に高山さん登場
 カキとタマちゃん  ボイストレーニングの先生・多賀さん 鮭トバの皮を食べる愛犬パイタン

写真展「イラクの子供たちは今」・杉並
イラク人民 大虐殺を許すな!
 1991年湾岸戦争では20万人が虐殺され、劣化ウラン弾の汚染でイラクの人たちは今なお苦しんでいる。その後11年余の経済制裁と、たえまない爆撃で160万人が殺されている。半数が子どもたちだ。そして今、それらさえはるかに超える惨禍をアメリカはイラクの人たちに強要しようとしている。

 米軍は次々に中東に殺到し、劣化ウラン弾、クラスター爆弾など残虐な兵器によってイラクの人たちにかつてない惨禍をもたらそうとしている。アメリカは、「体制変更」を計画し、すさまじい空爆と大規模地上戦で全イラクとバグダッドに突入しようとしている。「核先制攻撃」さえ公然と軍事戦略の柱にしている。なんとしても、この大殺戮を阻止しよう。
 原水禁運動の発祥の地・杉並で、「イラクの子供たちは今」キャラバン写真展が始まったので、
ヨッシーが参加。
ヨッシーの新曲『イラクの子供たちは今』
 イラクの子供たちが 毎日たくさん死んでいます
 ウラン弾の放射能で 白血病やガンになって
 こんなヒドイ事になっているなんて 僕は知らなかった
 テレビで見た湾岸戦争は まるでゲームのようだった
 あれから11年 空爆は続いていた
 電力施設 ミルク工場 病院や学校まで破壊されていた
 
 アメリカ アメリカ これ以上 イラクの人たちを殺すな
 アメリカ アメリカ これ以上 イラクの子供たちを殺すな

 国連の経済制裁で 薬や食料が無くて
 死を待つしかない子供たち 母親の怒り悲しみ
 広島・長崎に原爆を落とされた
 日本人にとって 他人事ではないはず
 原発のゴミから造られたウラン弾96万発
 放射能汚染は永久に
 イラクの人たちを むしばみ続ける

 アメリカ アメリカ これ以上 イラクの人たちを殺すな
 アメリカ アメリカ これ以上 イラクの子供たちを殺すな
11・5 医療観察法案を廃案へ/フッ君
 11時半より衆議院第一議員会館前でビラまきと街宣。午後、5組に分かれて各議員会館を議員回りしてロビー
活動。私(フッ君)を含めた組は、衆議院第二会館の5−7階を担当。法務委員には申入書を渡して要請・質問し、
そうでない議員にはビラを渡して法案の問題点を訴えていたが、公明党の白保議員の秘書が「予約をした議員
以外を訪ねるのは規律違反だからすぐに止めろ」と難癖をつけてきた。そればかりか私たちを追いかけてきて、
「警備員を呼ぶぞ」と恫喝を掛けてきた。なんとも情けない秘書だ。公明党は誰の味方なのか。私たちは主権者なんだぞ。今の公明党のあり方を見事に示しているなー。すぐに警備員がやって来て「警告」するが、館内でもめるのも本意で無いのでいったん引き下がり、その後再開し、ほぼ全室を回った。

 社民党、民主党は大体、政府案の内容は理解しており、反対を表明。共産党も一応、反対の姿勢を見せる。
しかし民主党は法務委員会で、この法案に触れないようにして、ひたすら先送りにする作戦のようだ(!?)。しかし自民党議員の秘書が口走るには「民主党をどう説得するか」と水面下で攻防が続いており、予断を許さない状況だ。実際に「民主党は国会終了間際になって、自民党から修正が出されたら応じるのか」と問うと口を濁していた。

 「精神障害」者にとしての自己解放を賭けて「障害」者・労働者・市民と共に廃案まで闘う決意を改めて固めた。 

夕食は、豚キムチ丼、水餃子をハネやんのお姉さん10人で食べました  火事で2時間遅れで帰宅の洋平君。
作業所の職員が洋平君の乗ったバスを
見つけ作業所の車で送ってくれました。
2002年11月5日
 心神喪失者医療観察法案 社会復帰への可能性奪う
鈴木英生(青森支局) 


障害者と職員が対等に参加する店内ミーティング=東京都練馬区のリサイクルショップ「街」で9月16日、鈴木英生写す
 ◇地域と結び付いてこそ

 青森市の田中暁彦さん(30)は5年前、幻聴や妄想の末、自室に放火した。強制入院させられた病院では、清掃時もベッドを離れられず、薬でひたすら眠らされた。その彼が、障害者団体のメンバーとして講演や交流活動に奔走している。仲間や地域の人々と結び付き、病気と「和解」する道を見つけたのだ。日本の精神医療や法制度の現状を考えると、田中さんのケースはきわめて幸運といえる。だが、今国会で審議中の心神喪失者医療観察法案は、そのわずかな可能性すら奪いかねない。

 毎日新聞の青森面で連載した「こころを閉じ込めないで」の取材で彼と出会った。田中さんを「回復」させたのは病院ではない。退院後に加わった青森市のNPO「SANNet青森」である。ここでは同じ経験を持つ者同士が「いらいらする時どうするか」など、病気との向き合い方を語り合う。「社会復帰しなければ」という強迫観念から解放されることで、社会との回路を開くのだ。

 取材を重ねるうち、気づいたのは「その人のあるがままを認めず『まともであれ』と強いる社会こそが精神をむしばんでいるのではないか」ということだ。

 東京都練馬区の府川政人さん(37)は5年前、うつ病になった。それまで精神障害者によるリサイクルショップ「オープンスペース街」の運営委員員と精神科の作業療法士を掛け持ちしていた。「街」での対等な人間関係と、病院での「療法士と患者」という役割が固定した関係。「役立ちそうにも思えない」社会復帰訓練を同じ人に10年以上繰り返させるむなしさ。その矛盾に悩み、自らも発病した。

 医療観察法案は、府川さんを追い込んだ矛盾を拡大し、固定化する恐れがあると思う。その核心は、殺人や放火、傷害などを犯した精神障害者に対し、医師が「再犯の恐れなし」と判断するまで入院させたり、強制通院させることにある。しかし、欧米の例を精査した日本精神神経学会の「精神医療と法に関する委員会」は「再犯予測は、8割方間違う」と警告する。

 判断を迫られる医師の立場になれば、「再犯の可能性を見逃した」と非難されるよりは、「疑わしきは退院させず」という安全な道を選ぶ心理が働くかもしれない。健常者には適用される「疑わしきは罰せず」の原則が、障害者には正反対になりかねない。「予防拘禁」「保安処分」との批判が出るゆえんだ。人格障害や精神病質などの人も対象になり得る。治療法のないそれらの人々は、一生入院させられる恐れすらある。

 現状でも日本は世界有数の「精神障害者隔離大国」である。精神科の病床数は人口1000人に2・9床。英国は1・5床、米国は0・6床だ。一方、医療法は精神科医の数を48床に1人と定めている。この数は高齢者医療などの長期療養病棟と同じ。内科の16床に1人と比べ、あまりに少ない。平均在院日数は376・5日で、経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国平均の約50日をはるかに上回る。

 5年以上の長期入院が全入院患者約34万人の半数近くを占め、行き場がなく退院できない患者が7万人はいる。政府はハンセン病患者に謝罪したが、隔離を続けてきた精神医療政策についても、反省し謝罪の姿勢を示すべきではないか。

 こう述べると精神障害者の犯罪について危惧(きぐ)する意見が出てくるだろう。しかし、01年度犯罪白書によると、刑法犯で検挙された精神障害者の数は711人で、全国204万人の精神障害者の0・03%。全人口に対する刑法犯検挙数の割合0・03%と変わらない。「健常者」が犯罪者になる可能性があるし、精神障害者も同じことだ。「狂気」を暴力で表現する人も、暴力を受けて苦しむ人もいるが、SANNet青森事務局の根本俊雄さん(50)は「30年近く精神障害者とかかわって一度も暴力を受けたことはない」という。

 SANNetがミーティングで読む「回復の十原則」には「私は精神病の患者である前に一人の人間です」とある。
「オープンスペース街」を訪れる1人暮らしのお年寄りや商店主、主婦らも障害者を「一人の人間」と認め、世間話に興じる。特別な社会復帰のプログラムはない。あるのは法案の隔離思想とは対極の地域との深い結び付きだ。

 異質な人々を排除して成り立つ、無味無臭の社会になぞ私は住みたくない。困難を抱えながらも多様な生が響き合う社会にこそ、生きる価値があると思う。法案は反面教師として、そのことを教えてくれる。
 メールアドレス kishanome@mbx.mainichi.co.jp
(毎日新聞2002年11月5日東京朝刊から)

精神障害者と犯罪統計
 精神障害者は、法的差別欠格条項や社会的差別の中で、生活権、生存権さえも脅かされながら生活してゆかざるをえない。そのなかで健常者と同様に犯罪を犯す場合も起こりうる。だが、「精神障害者の犯罪」となると、それだけで特別視される。
 概して言えることだが、何か事件が起こり、それに関しての警察発表があると、マス・メディアはそれをそのまま報道する。警察が被疑者すなわち犯人として発表すれば、「無罪の推定」もあらばこそ、冤罪だろうと正当防衛や緊急避難の成立するケースだろうとおかまいなしに、警察発表どおり犯人として報道する。マス・メディアの報道の被害にあった人は少なくない。
 さらに、警察発表で被疑者が精神障害者であるとなれば、まず、扱いが大きくなる。入院歴や通院歴のあるなしをはじめ、マス・メディアはさまざま書きたて、放映する。「専門家」や「識者」を登場させ、あれこれ無責任な発言をさせる。犯行を犯したかどうかわからないうちから、正確かどうかもわからない新聞やテレビの報道だけで「診断」する「有名」な「精神科医」が登場し、DSM‐W(精神疾患の診断・統計マニュアル)の項目を当てはめたりする。
 こうして、新聞の読者、テレビの視聴者は、「行為障害」とか「人格障害」とか、内容抜きに「専門」用語を覚えこまされ、「精神障害者は犯罪を犯しやすい。危険な存在だ」と思いこませられる。
 順序を追って見ていこう。
 「精神障害者が犯罪を犯しやすい。危険な存在だ」という主張には根拠がない。まずもって、警察庁の統計数字の上からも、そのことが確かめられることを示してみよう。数字で語るのは、個々の状況、条件を消してしまうので問題がある。さらに、本来なら、「犯罪」概念について時代的、社会的背景の考察も必要なのだが、その点はおくこととする。

(1)犯罪統計

 「犯罪白書」の数字は、きわめて意図的である。
 精神障害者が起訴前鑑定で不起訴とされ、措置入院とされれば、本来なら正当防衛や緊急避難が認められ無罪判決となるケースでも、裁判の権利そのものが剥奪されることとなり、統計数字の上では「精神障害者の犯罪」とされるわけである。その数字を基に「白書」は次のように述べる。
 「警察庁の統計によれば、平成12年における交通関係業過を除く刑法犯検挙人員30万9,649人のうち、精神障害者は711人,精神障害の疑いのある者は1,361人であり(以下、精神障害者と精神障害の疑いのある者をまとめて「精神障害者等」という)、交通関係業過を除く刑法犯検挙人員に占める精神障害者等の比率は、0.67%である。」(「犯罪白書二〇〇二年版」第3節 精神障害者の犯罪)
 まずここで、「精神障害者等」(注1)が意図的であるが、とりあえず、この数字から考えることとする。
 日本の精神障害者の総数は正確には分らないが、200万人以上といわれている。病院の中では他科でも向精神薬は使われているし、抗精神病薬を用いている医師、それも精神科の医師、も珍しくない。それらをすべて含めた精神医療サービスのユーザーの数は、300万人を大きく上回るであろう。
 250万人としてみても、零歳児まで含めた総人口約1億2,700万人の1.96%である。300万人なら2.36%にものぼる。
 単純に比較すれば、0.67%は1.96%の約3分の1である。つまり、精神障害者の犯罪率は、健常者の犯罪率の3分の1にしかならない。
 犯罪率の数字で「精神障害者の危険性」を立証しようとしても成功しない。再犯率を取り上げてみたらどうか。それでもやはり、うまく立証できない。
 1981年から1991年までの間で、精神障害者の再犯率は21.9%であったという調査がなされている。(注2)
 一般の再犯率については、次の国会答弁がある。
 「当局におきましては、不起訴とかあるいは起訴猶予になったものも含めたいわゆる再犯率につきましては統計を把握しておりませんが、行刑施設、刑務所を出所した者がその後5年間を経過するまでの間に再び入所してくる、いわゆる再入率は統計をとっております。これは、出所者のおおむね45%前後であります。」(第154国会衆議院法務委員会 鶴田政府参考人 02.5.17)
 不起訴や起訴猶予も含めたものとしては、警察庁の「初犯者・再犯者別検挙人員」(注3)の数字があるが、それで見ると、交通業過を除く刑法犯総数のうち再犯率は30%を上回っている(2000年は33.6%。なお、「凶悪犯」にしぼると50%を超える)。
 数字の比較の上からは、再犯率においても、健常者の方が「危険」なのである。
 犯罪率、再犯率では「精神障害者は危険」だと主張できない。そこで、「精神障害者の犯罪には、凶悪なものが多い」と唱えるものが出てくる。「犯罪白書」は、罪名別には、窃盗・詐欺・横領が最も多く、精神障害者等の総数2,072人のの53.5%を占めているとした上で、「罪名別検挙人員総数中に占める精神障害者等の比率では、放火の15.6%、殺人の9.3%が目立って高くなっている。」と述べる。。
 奇異なことだが、「危険性」を肯定する側も否定する側も、ほとんどが、この数字までは認め、その上で論議している。だが、次に述べるように、実はここにも詐術がある。暗数が無視されているのである。

(2)保健Gメン

 数字の上で、大きな問題は暗数である。警察による犯罪の認知件数と犯罪の発生件数とは異なる。暗数を考慮すれば、「警察白書」の「精神障害者の犯罪には、凶悪な犯罪が多い」という主張も崩壊する。
 通称「保健Gメン」と呼ばれる生命保険死亡調査員の、次の話は有名である。
  「現代の交通事故の何割かは確実に"他殺"です。これは"殺し"だと思っても、警察はすで
  に"事故"として処理していてなかなか再調査にのり出そうとしないし、私どもも保険会社の
  契約部門にさしさわりが出るのをおそれて、あきらかに計画的な殺人だと思っても深追いを
  あきらめることがある」(岩川隆著『殺人全書』)。
 もし、これが事実なら、精神障害者による殺人事件の比率が大きいというのも、全く変ってくる。
 最初に、警察発表の交通事故死者の数字は、以前は24時間以内のそれであったが、現在は30日以内の数字も発表している。2000年中の24時間以内の交通事故死者の数は8,747人で、30日以内となると約15%増加して、10,060人と発表されている。
 警察発表の数字は、直接には、一つには事故にかかわる裁判等に必要な記録の作成のため、もう一つは、警察側の交通事故対策すなわち交通政策のためのものである。交通政策のための数字は、救急医療体制がすすんだ結果、交通事故死者が減ったとしても、警察の交通事故対策を評価させることになるが、そのことはさておくとする。交通事故を原因とする1年以内の死亡者数を、ICD(国際疾病分類:たとえば厚生労働省の発表する人口動態統計に記載されている)の数字で見ると、やはり2000年で、30日以内の死者の数字を、29%も上回って12、378人となる。
 仮に、保険Gメンの話がそのとおりだったとする。元の数字をどちらも最小に見積もるとすれば、つまり、"24時間内"の死亡者数の"1割"とすれば、870人となる。
 警察庁発表による殺人事件の認知件数の1,310件の中には、未遂罪が含まれている。やはり警察庁発表による殺人事件の死亡者数は539人、30日以上の重傷者数は631人である。これに対し、870人というのは、当然、死亡者数である。
 また、2000年中の家出人は、警察が捜索願を受理したものだけで97,268人である。このうち所在確認したものは87,223人だが、そのことは、所在確認できなかったものが10,045人ということを意味しない。捜索願が出されていなかったものが3,493人も含まれている。捜索願を出さない家出人の数は、それ自体、暗数なのである。
 このことは、1万人を大きく上回る行方不明とされている人の中に、殺人事件の被害者になっているケースは、かなりあるのではないかと推測させる。
 また、警察統計では、2000年中の自殺者数は31,957人となっている。この中にも、自殺に追い込むことを広義の殺人と呼ぶケースは除外して、殺人罪適用の対象となる謀殺もないとはいえない。そのほか、火災による焼死者の中にも、殺人事件の被害者であって、数字の上で、そのように扱われないケースも含まれることは、容易に類推できる。
 日本では、アメリカと異なって、一般の武器所持が厳しく制限されているから、どうしても、行方不明とか交通事故とか装う謀殺が多くなるであろう。実際に、少女監禁事件や保険金殺人事件など、ときどき、マス・メディアで報道されることがある。謀殺の例では、ほとんど、公判においても刑法39条の適用はない。
 交通事故死の1割、家出人・行方不明者、自殺者の1%が殺人だったとするのは無理な仮定ではないだろう。それだけで、殺人事件の件数は警察発表の件数とはまったく異なったものとなり、したがって、「精神障害者の凶悪犯罪」の相対的比率も、それに応じて小さくなる。
 殺人事件の暗数には、病死や交通事故以外の事故死にも含まれる。暗数がすべて掌握されることがあるとしたら、この相対的比率は、はるかに小さくなることは自明である。
 「犯罪白書」が暗数を無視して「放火の15.6%、殺人の9.3%が目立って高くなっている」とするのは、ほとんど無意味である。

(3)暗数よりも……

 警察のいう「精神障害者による凶悪犯罪」として殺人とならぶものに放火があるが、その放火事件についても、殺人事件と同じことが言われている。火災事故があったとき、放火であるかどうか、警察と消防と保険Gメンの数字は異なっている。もちろん、この順序に数字が大きくなっている。放火について「警察白書」と「消防白書」の数字は違いすぎるので、要点的にも整理しきれない。
 ここでは、別な載り口となるが、ひとつだけM君の例をあげておきたい。M君は放火事件を犯した。逮捕され、取調べで自白し、有罪判決を受けて実刑に服した。
 M君がそれでも冤罪を主張しつづけた。彼は「僕は、カツ丼の差し入れでドンブリ自白をしました。放火したのは事実です。でも、これとこれは僕がやったことですが、あとは違います。それが認められないのが口惜しい。」と語る。
 M君のドンブリ自白の例は、二つの問題を含んでいる。
 一つは、認知件数だけでなく、解決件数にも問題があること。
 もう一つは、家族からも見放され、社会から孤立している精神障害者に対しては、冤罪はそ
 れだけ容易であること。
 もともと、差別社会の中にあって、精神障害者は冤罪の対象とされやすい。その上、起訴前鑑定で裁判権を奪われ、正当防衛や緊急避難も認められなくなる場合も少なくない。また、犯罪ではなく事故だった場合にも、警察が犯罪としてしまうこともある。前科や精神障害が絡んでいると、とりわけ起こりがちなことである。
 また、冤罪だろうと、警察側にとっては犯人を検挙して一件落着となるのであろうが、裁判で無実が認められてもなお、そのままということは許されるべきではあるまい。だが、警察庁の文書を注意して眺めているが、島田事件の赤堀さんが無罪を勝ちとった後、統計数字が修正された形跡はない。
 ここまでは、直接的な数字の問題である。だが、「犯罪白書」が警察庁の数字をそのまま流用して、「精神障害者"等"」の「凶悪な犯罪……」と記述したりするのは許容しがたい。警察庁の数字は、まだ精神保健指定医の診断前の段階のものとして、弁解の余地はあるかもしれない。しかし、法務省刑事局資料は、一方で検察段階で不起訴処分となったもの、一審で心神喪失、心神耗弱が認められたものについて処理状況、処理後の処遇・治療状況までを記載している。鑑定と診断とを区別するとしても、警察庁が発表した数字を捜査段階における参考資料として扱うならともかく、「警察庁の統計によれば、…………、放火の15.6%、殺人の9.3%が目だって高くなっている。」と、断定の材料とするのは許されまい。

  さらに、本質的に問題であるのは、精神障害者と犯罪との関連について語られるとき、そこで用いられる数字は、精神障害者の生活者としての面が切り落とされた上での数字だということである。
 すなわち、窃盗や詐欺から、放火、殺人にいたるまで、健常者の場合は、生活苦から犯したと言われると、おおかたが、刑罰の量定についてはともかく、犯罪の原因としてはありうることと承認する。だが、たまたま、犯人が精神障害者だったとなると、生活苦のために犯罪を犯したといった状況は消されてしまい、精神障害"ゆえ"の犯罪だとされるのである。
 かなり以前のことだが、O君は次のように語った。
  「ホテル・ニュージャパンの火事で大勢焼け死ぬと、スプリンクラーの不備のせいにさ   れる。精神病院や精神障害者の施設が火事になり、鉄格子と二重、三重の鍵で大勢の精神   障害者が焼死させられると、患者のタバコの火の不始末が原因だとされる。」
 もともと、精神障害者は社会的にこのような眼で見られている。それが根底にあって、国会でも次のような発言がまかりとおっている。
 「精神障害者というのは、要するに精神の障害があるわけですから、判断能力が乏しいとかないとかいろいろそういう現象が多いと思うんです。」(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律一部改正案についての質疑 [国民福祉委員会]  国務大臣 宮下創平君 1999.4.15)
 まさに、自分自身の判断能力が乏しいことを示す答弁である。
 週刊誌「朝日ジャーナル」が廃刊になる前、その記事に抗議して、精神障害者が当事者として書いた文章を見て、記者が「これ、ほんとに精神病者が書いたのですか」とビックリしたのにこちらがビックリさせられたことがあった。いま、さすがに精神障害者なら文章能力がないと思う者はいないだろうが、宮下前厚相の答弁は、そのことを彷彿とさせる。
 マス・メディアは、精神障害者の関与した事件となると、きまって大きな取り扱いをする。その際、生活者としての面については一顧だにしない。冤罪で精神障害者が逮捕された場合でも、入院歴や通院歴といったプライヴァシイをあばきたて、精神障害者であることが、あるいは精神障害そのものが、犯罪の原因であるとし、「危険な精神障害者から社会を防衛せよ」と喧伝して差別を助長する。

 生活者としての面に戻る。
 北陽病院事件で、最高裁は上告棄却の理由の中で、「(措置入院中の患者が)離院中に"金員を強取する目的"で通行人を殺害した」としている。
 この患者は、服役終了と同時に措置されている。長い拘禁の中で、社会生活を営むことも困難にされていた。最高裁も認めているとおり、病院から外出中に強盗をするのは、錯乱のいたらしめるところではない。いうならば、生活者としての犯行のうちであろう。
 生活者としての面を切り落とすのは、犯罪の原因を精神障害に帰するためである。経済的に行き詰まっての窃盗も、すべて、精神障害者のせいであり、錯乱の結果であるとするためである。
 すなわち、「精神障害者の犯罪」=「精神障害ゆえの犯罪」=「危険な存在としての精神障害者」との断定が、生活者としての面を切り落とすことから始まり、やがて「危険な精神障害者から社会を防衛せよ」との大合唱につながる。
 「触法精神障害者」という表現は、触法少年になぞらえたものであり、当初は責任無能力者を前提にしていた。それがいつのまにか犯罪を行った精神障害者全部を指すようになった。この表現自体が精神障害者差別にほかならない。
 犯罪の概念や原因についての、精神障害者差別の上に立った刑事政策論やその批判を、ここで全面的に展開する余裕はない。そこで、精神障害者を他の文字に置き換えて考察してみよう。
 いま、たとえば、福島県人は犯罪を犯しやすいとされたとする。どこかで殺人事件が発生したとき、被疑者が福島県人である事が判明したとたん、被疑者すなわち容疑者すなわち犯人とされ、生活苦その他の、少なくとも現在、一般に認知される犯罪の原因がすべて切り落とされ、「福島県人の犯罪」とされることになったら、そして、なまりがあって福島県人の疑いがあるとか、かって福島県に居住したことがあるとか、そういった人の数字を加えて水増しをして、やはり福島県人は犯罪を犯しやすいとするとしたら、だれもが、荒唐無稽だと言うであろう。
 警察庁や法務省、あるいはその尖兵の役割を果たしている「研究」者が、「精神障害者が凶悪犯罪を犯しやすい」というのは、これとおなじことであり、意図的、操作的な誤りである。暗数や冤罪を意図的、操作的に隠蔽した統計数字とは、あたかも科学的な数字として用いることによって、その実、精神障害者に対する差別、偏見をあおるための虚構にほかならない。

(注1)警察庁の定義は次のとおりである。
 1 「精神障害者」とは、精神分裂病者、中毒性精神病者、知的障害者、精神病質者及びその他の精神疾患を有する者をいい、精神保険指定医の診断により医療及び保護の対象となる者に限る。
 2 「精神障害の疑いのある者」とは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第24条の規定による都道府県知事への通報の対象となる者のうち精神障害者を除いた者をいう。
 3 「性格異常者」とは、精神障害者又は精神障害の疑いのある者には該当しないが、性格に異常性が顕著に認められる者をいう。
 (注2)山上皓他:「触法精神障害者946例の11年間追跡調査−再犯事件487例の概要−」
 (注3)警察庁の再犯者の定義は次のとおりである。
 「再犯者」とは、刑法犯、特別法犯(道路交通法違反を除く。)の別を問わず、前科又は前歴を有するものをいう。


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