2003年5月11日

怒りを込めて、闘うしかない
地域ビラ撒きから、病院調査まで
 去年から、心神喪失者医療観察法案に対するビラ撒きを、前進友の会として取り組んできました。横断幕を作り、毎週毎週四条の高島屋前でやっていました。そのうち地域で撒こうと言うことになり、山科のラクト前で行うようになった。人の通りは少ないけど、それなりに反応もあったと思います。

 特に、ハンドマイクを持って「私たちは精神病者です」と叫びます。これは凄く勇気のいることでした。私も、買い物によく訪れているところなので、友人や子供の友達にあうこともありました。誰かに会うかもしれないのに、堂々と「私たちは病者です」そういうのです。しかしみんな言ってきました。自ら病者であると名乗ることは、誰にでもできません。それこそ地域で静かに暮らしたいのです。しかしこの行為は、自らの怒りを込めた闘いだと思っています。自分の住む町で、自分をさらけ出して生きていくことは、時に爆発し、自らの存在をかけてみようとします。それほど、許せない「法案」だったからです。

そんなことが仲間の胸にあるとき、梅雨時のことでした。
雨で、それなら学習会でもしようと言うときに、恐ろしい事実がわかりました。
電気ショック療法が、また行われている。それも、良心的と言われ信じていた人が関わっているらしいこと。ショックでした。私たちの原点は「十全会」闘争でした。電気ショックについては、1970年代から、患者さんを脅し、懲罰的に行われてきていました。入院直後に電気ショックをされ、殺された人。職員にきらわれ、逃げまどう患者さん達、まさに悪徳病院の患者さんを恐怖に惑わせた、非人間的医療行為。宇都宮病院、大和川病院、どれほどの病院が行っていたのだろう。「病」者集団や闘う医者集団が、学会などで訴え、幾分減ってはいたが、最近症例研究や、関東圏では大ぴらに行われるようになってきていました。そしてかって「反保安処分」の闘う医者まで、手を染めてきていることが、事実としてあること。また今年に入って入院直後に電気ショックをかけられ死亡した患者さんがいたこと。厚生労働省で、電気ショックの治療点数が3000点になった、(一回すると30000円)それを何回も続けるという。

 私たちが安心してかかれる病院がなくなるのではないか。ちょっと言うことを聞かないと、麻酔され気がついたら電気ショックをかけられるのではないか。それは恐怖です。自分のかかれる病院のことを知らない。それじゃあ自分たちで調べてみようと言うことになりました。藤枝友の会の静岡での病院調査を参考にして、質問票を作り、月1回のペースでやろうと言うことになりました。京都市と宇治市を中心に手紙を出しました。16カ所のうち、6カ所が okを出してくれました。

  6月、7月と調査が行われました。正直疲れます。そうした中で7月10日医療観察法が通ってしまいました.その日私たちは大阪で「かけがえの前進」上映・トークショウに望んでいました。映画は前のものよりずっと良いものだった。そしてトークショウも盛り上がり、会場からの声も聞けたが残念ながら、「精神科救急」「移送制度」「医療観察法」も必要という意見が出た。ショックだった。予想はしたが病者らしき人がいったと言うこともあり残念だった。今、私たちは疲れています。それは、「法案」が、「法」になり、ずっしりと肩に頭にのっかています。それでも、まだまだやるつもりです。
今は、今しかできないことをきっちりやりながら、また生活を続けていきます。地域で根を張りながら・・・。


各病院院長宛依頼状

 前略 
 私たちは、京都山科にある精神病者とその友人の会「前進友の会」です。
1976年11月に、当時貧困な精神医療と福祉に負けないで、地域で「共にいきる」事を目指して活動してきました。私たちの活動は今の精神病者への不当な差別・偏見をなくし、誰もが胸を張って生きれるように願っています。そうした中で、面会活動やアパートでの一人暮らしなどの助け合い、悪徳精神病院の告発などに力を注いできました。また1985年には、「やすらぎの里」と言う作業所も作りました。もちろん私たちの力のなさで多くの人たちが、命を絶っていったこともあります。しかし、何度となく会としての存続をかけて仲間の分まで生き抜くことを、目指してきました。人間として、病気や差別に負けることなく、地域で根を下ろしていき抜くことです。作業所では、単に社会復帰を目指すのではなく、自分らしく生き抜ける力をつけ、反公害の手作り石鹸作りに励んでいます。

 先日、驚くべき事を知りました。
あの「電気ショック療法」が、未だにおこなわれている、それも厚生労働省の医療点数では3000点と言う高額な療法としてあげられていること、また専門誌にも「安全な」有効な療法として症例まで乗っており、関東圏では大手を振って行われていることを知り、愕然としています。今、日本の精神医療はどこに行くのでしょうか。「医療観察法案」も参議院を通過し、成立目前です。私たちの未来は恐ろしいものです。

 私たちが関わってきた悪徳精神病院の中では「電気ショック」は、患者を抑圧し、言うことを聞かせるための暴力装置でした。かって精神神経学会でも、電気ショック療法を廃絶する事を、医者も患者も訴え、承認されてきました。そうした運動に関わられた「良心的精神科医」の方々は今はどうされているのでしょうか。これから、私たちが安心して、医療を、本音を言える医者はいるのでしょうか。本当に不安です。そうして命に関わることです。

 私たちはこうした不安を抱きながらそれでも、この京都の地で生きていきたいと想っています。そのためにも、私たちのかかっている医療機関、とりわけ入院できる病院の実態を自分たちの目で確かめたいと想っています。いつでも安心して休める病院は私たちには不可欠です。そこで、貴病院を訪問させて頂き、医療の内容を教えて頂きたく想っております。患者さんへの処遇も併せておしらせください。宜しくお願いいたします。
                           2003年5月

    前進友の会
                   京都市山科区日ノ岡坂脇町7−5
                   電話075−591−7926

病院院長殿

 貴病院の訪問をさせて頂き、院長に直接お会いして、お話をお伺いしたく想っています。また病院を見学させて頂きたく想います。つきましては、ご都合のよい日にちをお教えください。

6月15日までに宜しくお願いいたします。

目次のページに戻る
inserted by FC2 system