オープンスペース街・日誌

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2002年4月B

4月15日(月) 「街」日誌

★日曜日、ハネやんがバイクで2年も引きこもっている安西さんの家を訪ねました。
 彼は寝ていてたので、お母さんと話をしました。
 帰り際、2階の彼の部屋にいって、「安西さん、ハネやんだよ」と肩を叩くと、少しだけ目をあけて、僕を
 みました。「いつまで冬眠してるんだい。また来るからな」と言うと、安西さん白いヒゲの顔ではコックリと
 うなづきました。
 バイクだと1時間以上、かかる距離だけど、まち「街」に来て、一緒に酒が飲める日まで、通おうと決めました。
 夕食の時に、ラップをやっている若者が来ました。ヨッシーのライブや、満月まつりのビデオを見ながら、
11時頃まで、話し合いました。5・6集会、僕たちと一緒に出演するかもしれません。

5.2第二回保安処分学習会へのご案内
02年4月  関西保安処分問題学習会運動 
尼崎市西長洲町3−6−13−23共生舎内 рO90−305−40947
保安処分でどうなるのか学習しよう
 3月18日、「心神喪失者等処遇法案」という保安処分新法が国会上程されました。「心神喪失者等処遇法案」で一体何がどうなるのでしょうか。第二回学習会では、治安法的観点からと「精神病者」差別という観点から講演をいただきます。ぜひご参加ください。

 新法で一体何か起きてくるのか。いまでさえ「病者」に対する差別は大きなものがあります。その上に新法が加わってくるのです。差別の激化は恐るべきものがあると思われます。また、この法案は治安維持という観点から、「病者」や政治的確信者を取り締まるものだといわれています。地域で差別の中で暮らし、生活している「病者」の生活基盤がどのように破壊されるのか。生活の場から保安処分施設の収容されるばかりでなく、今を精一杯生きている多くの「病者」に対してその生活基盤が破壊されるような差別の激化が襲ってきます。「病者」=犯罪者といわんばかりのキャンペーンがはられ、地域で暮らしている「病者」は今まで以上に差別にさらされています。

 基本的人権を奪うもの
 この法案は、憲法で保障された基本的人権など「精神病者」に対しては一切必要ないとするものです。「社会にとって危険な、犯罪を犯すような精神病者」には人権は必要ないという差別主義への労働者市民の屈服を引き出し、「病者」差別のエスカレーションをはかるものです。

予防拘禁と不定期刑

この法案は、予防拘禁制度と不定期刑を新たに作り、「再犯のおそれあり」とすることで「病者」や政治的確信者などを、事実審理もなしに一生保安処分施設に収容するというものです。「再犯のおそれ」など証明不可能なのですから、逆ら言えば証明はいらないということです。そして「再犯のおそれ」のなくなるまでとして一生を収容されるということになるのです。「再犯のおそれ」が証明不可能なように、「おそれ」がなくなるということも証明できないからです。またこの法案は事実調べが行なわれず、無実の主張ができないというものです。 
   
新法に無関係の「病者」はいない
そのようにして次々と、警察が「危険」とみなした地域で生活する「病者」や政治的確信者を保安処分施設に収容し抹殺していくということが狙われているのです。
さらに、収容される先は普通の精神病院ではなく、病院のなかに特別に作られた施設だとされています。そこで行なわれることは病気の治療ではないのです。再犯を防ぐという治療など医学的にはありえないからです。治療ではない拷問に等しい強制収容が一生行なわれるということです。

政治的確信者が対象に
この新法は「反社会性人格障害」なる非医学的・反精神医療的な概念を含んだものです。この考え方は、国家の政策に従わない革命家、労働運動家などの政治的確信者に対して、「人格障害」という精神障害の一種だと規定して隔離収容するというものなのです。政治的確信者を「反社会的人格障害」と規定するためのでたらめきわまる診断基準が存在するのです。
学習会と国会闘争で廃案に追込もう
このような絶対に許すことのできない危険な動きに対して、私たちは関西で保安処分問題学習会運動を立ち上げました。2月23日、第一回の学習会を「病者」、労働者、医療関係者など35人の参加で闘いとりました。そこでは「病者」が次々と発言に立ち、「病者」への差別を糾弾し、自己解放の宣言を発しました。第二回の学習会に総結集し、国会に対する直接行動・実力闘争でもって、保安処分新法をほうむりさりましょう。

労働者市民は、差別をのりこえ、地域で暮らす「病者」と共に生きていきましょう。地域で暮らす「病者」との具体的な連帯こそが求められています。労働者市民を襲う差別キャンペーンに対して、それを許さないという立場をつくるためにも、地域で暮らす「病者」との連帯が何より必要なのです。「病者」差別に屈服し、この法案を通してしまえば、今度は労働者市民が収容の対象となります。自らにかかってくる火の粉を取り払う方法は「病者」差別を許さないということです。その差別を許さないということを実践するには具体的な「病者」と接することです。その場の一つとして学習会に参加しましょう。

5月2日、午後6時30分、尼崎市立小田公民館に集まりましょう。小田公民館はJR尼崎駅北東すぐのところです。
講師、柴田明さん。兵庫県立光風病院精神科医師。他。

4月14日(日) 「街」日誌

 休日の人が多くて、ちょっと静かな土曜日。それでも、エイちゃん・ガンちゃんを中心に署名・アピールは忘れません。

「オープンスペース街」の皆さん!
お元気ですか。
                 発信:まよなかしんや
「保安処分」問題で、沖縄でも徐々に議論が起こっています。

 闇夜を照らす満月のように全ての生命に共生の光を!21世紀の未来を共に歌おう!!!!!
   
@まっぴるま満月コンサート
  
 日 時: 4月28日(日) PM3:00〜5:00
 場 所: 県庁広場 特設会場
 出 演: まよなかしんや・金城繁・知花昌一、会沢芽美、
       ヤマジン、下地重人、ジュゴンの家、アゴラ、他
 入場カンパ
 
 主 催: 第34回満月コンサート実行委員会
       TEL・FAX 098−876−1352
A4.28どこいった? 5.15どこへいく集会
 日 時: 4月28日(日) PM5:00〜6:00
 場 所: 県庁広場 特設会場
 主 催: 安保50年「復帰」30年を撃つ沖縄行動
        TEL・FAX 098−832−5974
B道ジュネ―(県庁〜牧志公園)
 日 時: 4月28日(日) PM6:00〜7:00(県庁〜牧志公園)
    これでいいのか 沖縄・日本・世界?
 友ぐぁの皆さん!来る4月28日(旧暦3月16日)の満月の夜空の下ではなく真昼間(午後3時〜5時)、那覇市のどまんなかの県庁前広場にて、平和・人権・環境・共生をテーマに第34回目の満月ライブを開催します。

 友ぐぁの皆さん!今年は「復帰」30年・安保50年の節目の年である。この間、ワッタ―沖縄人は爆弾(基地)を枕にして暮らしているにもかかわらず「沖縄はだいじょうぶさぁ」キャンペーンをしていて本当にいいのであろうか。

 友ぐぁの皆さん!最近ほとんど報道されていないが、米軍によるアフガン攻撃はまだ続いているし、小泉内閣はブッシュ大統領の「テロ」退治を口実とした戦争拡大に追従し、有事立法・改憲へと突進しているが日本・世界は本当にこれでいいのであろうか。

 友ぐぁの皆さん!昨年の9.11事件は私達人類に、世界の人々が国境をこえ、肌の色をこえ、宗教をこえ、平和に共生するにはどうしたらいいのかを真剣に考え行動しなければならないことを提起している。
 友ぐぁの皆さん!21世紀の戦争も基地も貧困も差別も自然破壊もない平和な共生世界をめざし、共に前進しようではありませんか。多くの皆様の参加を呼びかけます。 

「反戦・平和アクション」編集委員会
 「反戦・平和アクション」編集委員会 http://peaceact.jca.apc.org/ です。いつもお世話になっております。

 お忙しいところ、Bcc:同報によるメールをお許しください。

 さて、私たちからリンクさせていただいている、各反戦・平和の取り組み関連サイトの管理人のみなさまにお願いがあります。

 来る4月20日、東京は芝公園23号地にて、私たち「テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動」では、「世界の人びととともに戦争を止めよう!「有事法制」に反対 全国集会」(主催・同集会実行委)への参加を呼びかけております。

 小泉政権は、「平和・安全法案」などという欺瞞そのものの化粧を施した有事法制を今国会中で成立させようとしています。
 これに対しての私たちの取り組みはまだまだ大きくはありません。加えて、9・11以降の反戦・平和の取り組みについて、マスメディアがなかなか採り上げないという厳しい現状があります。

 この集会は、アメリカでの、自国の戦争に反対するワシントンD.C.での10万人集会の呼びかけに呼応し、日本で今まさに成立させられようとしている有事法制に反対するためのものとして取り組まれています。既に実行委員会は3回の討議を積み重ね、この集会を成功させ、4〜6月の国会動向を睨みつつも市民・労働者による声を束ねていくために奮闘してきました。

 集会では、非核フィリピン連合事務局長、韓国全国民衆連帯代表からの報告や、喜納昌吉さんの唄とアピール、反基地運動やインターネットでの取り組みの紹介、有事法制で徴用命令を出される職場の労組の決意表明などがあります。

 この集会を成功させ、「戦争反対! 有事法制反対!」という「声」をあげ、さらにそれを私たちのメディアで伝えていくことが必要かと思います。
 そこで、ぜひ、この集会の告知を、下記のバナーとともに掲載していただきたいのです。

 リンク先
  http://peaceact.jca.apc.org/actions/index.html#200204206
 バナーURL
  http://peaceact.jca.apc.org/actions/images/banner0420.gif
 HTMLソース
    <a href="http://peaceact.jca.apc.org/actions/index.html#200204206"><img
     src="http://peaceact.jca.apc.org/actions/images/banner0420.gif"
     width="160" height="50" border="0"></a>

 もちろん、バナーは各サーバにダウンロード・コピーの上お使いいただいてもなんら問題はございません。

 以上、ぜひともよろしくお願い申し上げます。m(__)m

 「反戦・平和アクション」は、さらなる反戦・平和運動ポータルサイトと飛躍すべく、これからも各サイトはもちろん、難民支援他各地の反戦・反基地運動とも連帯してがんばっていく決意です。よろしくお願い申し上げます。

新処遇法案反対に向けて、サイラブネットへ参加しよう     2002年4月12日

 さる3月15日に閣議決定した「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」について、日弁連や精神神経学会その他、多くの団体が反対を表明しています。

 法案は、殺人や放火などの重大犯罪に当たる行為を行い、心神喪失等を理由に不起訴処分や裁判で無罪若しくは刑の減軽などで執行猶予など実際に刑に服さない者を対象にして、検察官が地方裁判所に申し立てを行い、入院・通院などを決定する新たな仕組みをつくるとしています。

 この法案に対する主要な反対理由は、予測ができない「再犯のおそれ」を要件にして、入院等の処遇を決めること、精神障害者だけを対象にする合理的根拠に乏しく差別や偏見を助長すること、そもそも医療や福祉の貧困こそ最優先課題であること、などです。
 日弁連の呼びかけで、情報交換と、具体的な運動展開をめざして、以下のようなMLが誕生しました。
 ぜひ、皆様にもご参加いただけますよう、MLをご紹介いたします。

【新処遇法案反対に向けて、サイラブネットへ参加しよう】
 日弁連主主催4・10意見交換会は、110名を超える全国からの参加を得、大成功を収めました。
 参加者の総意に基づき、精神障害者を再犯防止のため閉じ込める新処遇法案に反対する全国津々浦々の声と運動をつなぐためのネットとして、このネットワークを立ち上げます。

 こうした作業は初めてなので、いろいろ不手際があると思います。ご容赦くださり、御指導いただきますようお願いします。同時に、提案されている新処遇法案が処遇の内容も施設も人的スタッフについても、また、処遇施設と一般精神医療・福祉機関との関係も、何をとっても明らかにされないまま、処遇の入り口と出口のみを「再犯のおそれ」という刑事司法的観点で法律化しようとする手法に、恐怖すら感じざるを得ないことをお伝えせざるを得ません。

 このネットが、全国津々浦々で精神障害と向かい合い、苦悩しつつ、その改善改革を願う、多くの人たちの思いと運動の共有と立場や意見の違いを超えた連携の一助になり、危険な新処遇法案は慰安の成果を勝ち取る力になることを期待しし、ネット立ち上げのご挨拶としたいと思います。

 今後、とも宜しくお願いします。

【サイラブネットの登録について】
多くの人々に参加いただくよう、参加者を皆さんで増やしていきましょう。
登録は伊賀興一の下記アドレスに申し込んでいただければ、私のほうで登録します。
5月の連休明けから5月中が国会審議の関係で集中的な取り組みが必要となるようです。
学習会、街頭宣伝、市民集会など予定されている取り組みはどんどん、送信してください。

伊賀興一・いがおきかず
oio@k9.dion.ne.jp

4月13日(土) 「街」日誌
 4月11日の「街」前のアピール  
 沖縄の農民・加藤さんからタンカンが送られて
きました。「街」で売ってます。
仁君 いつも元気な声で訴えるサクちゃん


ビデオ撮影する新カメさん…
だったが、
テープを入れたつもりが、
クリーニングテープだった (-_-メ)
バリバリ・Aちゃん ノリノリ・サギリちゃん
12日、雨でも・寒くても訴えます。
 ← 慈雲堂病院の吉田シゲル首相。
   チラシ配布のバイトをしています。
   昔の彼女は、山本フジコさんだった
   という有名人と同じ名前。     
  夕食が終わり、夕食会初参加の  
    もっか憧れのサクちゃんと
    握手をしてゴキゲンの洋平君 

旅客自動車運送事業等運輸規則」というのが出てきた。いつ制定された法律かは出ていなかったが、確かにこうある。

(運送の引受け及び継続の拒絶)
第13条 一般旅客自動車運送事業者は、次の各号の一に掲げる者の運送の引受け又は継続を拒絶することができる
1 第49条第4項の規定による制止又は指示に従わない者
2 第52条各号に掲げる物品 (同条ただし書の規定によるものを除く。) を携帯している者
3 泥酔した者又は不潔な服装をした者等であって、他の旅客の迷惑となるおそれのある者
付添人を伴わない重病者又は精神病者
5 伝染病予防法 (明治30年法律第36号) による伝染病患者

★昨日、こう書いたら午後に、注文していた『Q&A 障害者の欠格条項―撤廃と社会参加拡大のために』(臼井久実子編著・明石書店)
という本が届いた。この本は http://www.butaman.ne.jp/~sakaue/restrict/qa.html でインターネット注文ができますよ。

 この本によると、「旅客自動車運送事業等運輸規則」の乗車制限を、1997年「絶対的欠格(付添人を伴わない精神病者)」を「相対欠格
に、1999年、「相対的欠格(付添人を伴わない精神病者)」を廃止とあります。

 また「海上運送法」(第9条)では、「付添人のいない精神病者に対しては、海上運送契約の申し込みを拒絶し、又は既に締結した運送契約を解除することがある」を、1999年、欠格条項は廃止されたとある。

 「公衆浴場法」における「精神病者」の利用制限があったが、1987年に「削除」された。

★この数日、なぜ運送関係で、「乗車制限」があるのかを、インターネットでいろいろ検索しました。そしてヒントをみつけました。
「鉄道営業法」が元になっているのではないか、と思いました。

「鉄道営業法」 明治33年3月16日法律第65号 〔総理・逓信大臣副署〕
            
最終改正 平成11年12月22日号外法律第160号〔中央省庁等改革関係法施行法1012条による改正〕

「朕(なんだって、天皇がまだ生きていた)帝国議会ノ協賛ヲ経タル鉄道営業法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

鉄道営業法

第1章 鉄道ノ設備及運送

 〔伝染病患者及び重病者の乗車〕
第4条 伝染病患者ハ国土交通大臣ノ定ムル規程ニ依ルニ非サレハ乗車セシムルコトヲ得ス 
      
附添人ナキ重病者ノ乗車ハ之ヲ拒絶スルコトヲ得」

 まだバスも、飛行機もない時代だ。「♪汽笛一斉 新橋を…」。「附添人ナキ重病者ノ乗車ハ之ヲ拒絶スル」の「重病者」。「自宅監置・座敷牢」から外に出始めたときに「重病者」の中に「精神病者」を加えて行ったのかもしれない。と言うことは、現在では、運送業の元締め、
「国土交通省令」などに「乗車制限」の条文があるのかもしれない。知っている人がいたら教えてください。

 とはいえ2001年10月末時点で、329法令に「欠格条項」が残っています。

 現在開かれている「第154回国会」でも、「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案」が審議されているので、http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/index_gian.htm  を参照。

 この本には、「地方条例による公的施設の利用制限―東京都内」の一覧表もありました。
 図書館が―板橋区、体育館―日野市、保谷市、プール―昭島市、日野市、保谷市、奥多摩町、大島町、市民会館―青ヶ島村、御蔵島村、教育委員会傍聴―三鷹市、保谷市、狛江市、清瀬市、瑞穂町他、議会傍聴―大島町、御蔵島町(2000年8月)

★この本の詳細は、徐々に掲載して行きたいと思ってます。

4月12日(金) 第36回 金曜集会
6年前の今日、遅くとも7年後には「普天間基地返還」と橋本・モンデールが発表したが、あと1年後に全面返還
されるなんて思えない。いろんなことはとにかく返還してから考えればいい!
 ジュゴンの家からは晋君がモズク取りのことと辺野古での訓練が朝5時から行われていること、うららちゃんは全日空の精神障害者搭乗拒否についてと、それに関する
サクちゃんの詩
を読みました。
キャンプシュワブに近い瀬嵩で照明弾を落とす
訓練や銃声がうるさい・・・20数年いてこんなに
うるさいことはなかった・・・・とトミさん。
うららちゃんの話を聞いて、障害者とか障害者でないとか
誰が決めるのか・・・国政さん。
金曜集会が終わって「あごら」へ行きました。福の木診療所の知念先生、はんたぴあの嘉手刈さんも来ていました。豚肉の竜田揚げ&レタス・トマト、大根とネギの味噌汁、からし菜と油あげのおひたしとコーヒーで600円!「あごら」はモノレールの駅ができるため立ち退かなくてはいけません。今、新しい場所を探すなど、上地さんたちはがんばっています!知念先生や上地さんにANAの精神障害者搭乗拒否の話をしました。

。                                  \│/
   。                                ─ ○ ─
    V..v              白  保  メ  ー  ル│\               Apr.11.2002
  >>∈∋<<    v..V                           。      No.23
""          >>⊂⊃<<                             .   .         。
.。,:'"*.,:'"*.,:'"*.,:'"*.,:,:'"*.,:'"*.・。。・     ・。。,;  " * ,.
                              //転載歓迎//
 <石垣市の考える赤土対策とは>             鷲尾 雅久
 3月14日、白保で住民と石垣市長との話し合いがもたれました。
 私にも、轟川の赤土流出対策について説明したいからと連絡が来ました。対象はカラ岳陸上案に反対している人達だと言うので、赤土流出対策の説明なら全住民にすべきだと思いましたが、沖縄で赤土汚染がもっともひどいという宮良湾を毎日目にし、かねてからこの問題に関心があったので、行ってみることにしました。

 会場へ行くと、白保の住民を中心に十数人の方が集まっていました。15分もかかった市長のあいさつのあと、職員が赤土対策の新年度事業を説明しましたが、わずか数分のあっけないものでした。話し合いの実績を作りたかっただけなのかと疑ってしまいましたが、頼んだら後で資料を送ってくれました。それによると、新年度(2002年度)の石垣市の赤土対策事業は次のようなものです。

[新年度の赤土対策事業]
1 ハード事業
 ・土地改良施設(沈砂池、砂防ダム、排水路等)に堆積した赤土等の除去 
  事業費 400万円
 ・法面保護、植生等の土砂流出対策、沈砂施設、圃場の勾配修正等
  事業費 4億8135万円

2 ソフト事業
 ・地力増強作物(緑肥)の鋤き込み  事業費 1759万円(農家負担含む)
 ・サトウキビ生産農家への緑肥種子購入補助  事業費 127万円(同上)
 ・心土破砕実証展示圃

3 流域環境保全農業確立体制整備モデル事業(環境省から県へ委託)
 ・赤土対策モデル基本方針策定調査(調査会社へ委託) 事業費 4400万円
 ・モデル対策実施調査(市がモデル流域で営農対策実施、検証) 事業費 1600万円

[足元から赤土流出?]
 市側の説明の後すぐ、白保住民から、今轟川河口付近で行っている土地造成工事で、排水が轟川に直接流れ込むようになっていると指摘され、職員が急きょ現場を見に行くという一幕がありました。

 戻った職員は、工事中は仮の沈砂池を作っていたから赤土は流れていないとの現場担当者の説明を伝えましたが、その後私が見たときには、見当たりませんでした。仮の沈砂池を作っても、工事期間中ずっと維持するのでなければ、効果がありません。

 造成工事の場所は、ほぼ平たんですし、耕地の周りに水路を廻らせ、流れた水は浸透池に導くという工夫もされています(浸透池の規模が、目算で数百立方メートルしかないのは、小さすぎるのではないかと疑問を持ちましたが)。しかし、道路の側溝は、轟川に流入するようになっています。その後少し雨が降ったときに行ってみたら、案の定側溝に濁水が流れていました。工事中の法面から流れ出ているようでした。

 工事の主体は、市長が理事長となっている宮良川土地改良区ですが、轟川の赤土対策を説明しに来たはずの市長が、そこで工事をしていることも知りませんでした。上記の「ハード事業」についても、工事期間中の赤土流出防止が不十分だと、せっかくの事業が泣くことになります。ひとつひとつ地道な仕事をしてもらいたいものです。

 続いて住民から、狭い地区の対策ができないのに新空港の赤土対策ができる訳がないとの発言があり、話題は空港問題に移りました。市側の話は、新空港は必要だ、現空港拡張はできないと、今までの繰り返しでした。

[轟川河口の大沈砂池構想]
 問題は、構想段階のものだ、との注釈付きで説明された、轟川河口の大型沈砂池の話です。どうやら担当より市長が熱心なようでした。

 私が以前から疑問に思っているのは、なぜ「沈砂池」や「砂防ダム」なのか、ということです。沖縄で問題なのは、「砂」ではなく「赤土」だからです。沖縄の赤土は粒子が非常に細かい上、川の水に混じると、マイナスに帯電してそれが磁石の同じ極のように反発し合うため、なかなか沈澱しません。1日の雨量が百ミリを超えることが珍しくないこの地域の河口付近で長時間水をためる沈砂池を作るとしたら、巨大なものが必要となります。石垣の水がめである底原ダムがもう一つ必要だと、事情を知る人達が冗談を言う程です。

 しかし、赤土は、海水と混じると、海水中のイオンの影響で沈澱します。河口近くなのでそれを期待しているのかもしれませんが、今度は堆積した赤土をどうやって除去するかが難題です。堆積したといっても少し動かせばまた舞い上がる状態なので、早く除去しないと意味がありません。

 また、轟川河口近くは、もとの川の流れが保たれ、自然の浄化作用もあります。白保の原風景を残すところでもあります。それを破壊して大型沈砂池を作るのでは、百害あって一利なしとなる可能性があり、住民の理解も得られないでしょう。
                  ◎
 赤土流出は、もとはと言えば大規模に自然に手を加えたことから始まっています。「ハード事業」は、その手直しという性格を持つのでしょうが、アイディアにすぐ飛びつくのでなく、本当に効果があるのか、十分に検討してから、計画してほしいと思います。

 また、今後の力点は農法の改善といった地道な努力に置かれなければならないでしょうから、農家への援助などに、さらに力を入れてほしいと思います。

  <<環境検討委員会が開催されます>>
 第6回新石垣空港環境検討委員会が下記のように那覇で開催されます。環境影響評価方法書の姿がそろそろ見えてくるはずです。時間のある方は傍聴に行ってみませんか。

1. 日  時 : 平成14年4月16日(火)
        午後1時30分から4時30分まで
2. 場 所 : ホテル「チュラ琉球」(県庁近く) 会議室

♪♪ 転載を歓迎しますが、著作権は各執筆者に属します。
    引用される場合は、執筆者にお断り下さい。

白保メール NO.23  02.4.11
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp

4月12日(金) 「街」日誌

予防拘禁・不定期拘禁法案を廃案へ
5・6集会へ参加を!

日時 5月6日(月) 午後1時開場
会場 労働スクエアー東京
(JR京葉線、地下鉄日比谷線「八丁堀駅」下車2分)
電話03−3552−9134


<内 容>

経過報告
歌・パフォーマンス オープンスペース「街」、その他

講演 
森元美代治氏
 (前ハンセン病裁判全国原告団事務局次長)

各団体からのアピール
* 集会後デモもあります
 入場カンパ 300円
〈危険な「心神喪失者医療観察法案」が国会に上程〉
 皆さん!今、危険なことが起ころうとしています。それは、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」という法律案が国会に上程され、審議されようとしていることです。

 この「心神喪失者医療観察法案」は、違法行為を行ったとされる精神障害者が、警察に逮捕され検察に送られても、心神喪失あるいは心神耗弱とされて不起訴(ないし起訴猶予)となり裁判にならなかったか、あるいは裁判になっても心神喪失による無罪等の判決を受けたときに、再び同様の行為を行うおそれがあるとされれば、強制的に入院ないし通院させて治療を加えるという新しい制度を定めたものです。通院については最長5年とされていますが、入院については期限がありません。これは1982年に当時の自民党政府が国会上程を断念せざるを得なかった刑法「改正」案の目玉だった保安処分案よりも悪質なものです。また「精神障害者は危険」という精神障害者差別を助長し、ただでさえ貧困な精神医療を歪めていくものです。

〈「心神喪失者医療観察法案」は予防拘禁・不定期拘禁〉
 「心神喪失者医療観察法案」には多数の問題がありますが、そのうち二点を挙げます。
 第一は、同様の行為を行うという「再犯のおそれ」の認定が困難であるということです。精神科医が鑑定を行い合議体(精神科医1名、裁判官1名)が判断を行うことになっていますが、人の行動の予測は、特に何年も先の行動であればなおさら、不可能です。犯罪に当たる行為の予測が困難であり、あえて予測すると多くの誤った予測が生まれることはこれまでの研究で明らかになっています。すなわちこういうあいまいな予測に基づいて入院させるということは、本当は入院させなくとも同様の行為を行わない人も多数入院させてしまう可能性があるということです。そして、この法律案に基づいて入院となれば、「再犯のおそれがなくなった」とされるまではいくらでも入院の更新が可能です。退院させた人が何らかの問題行動を起こした場合、強い批判が寄せられる可能性があるので、この判断にかかわる精神科医や裁判官は、退院させないという方向に傾くことは容易に予想されます。文字通りの不定期・無期拘禁が行われる可能性があるのです。

 そもそも刑罰は行われた犯罪に対して科されるものですが、この制度はそれとは異なり将来の行為に対して拘禁していこうとする「予防拘禁」であり、このこと自体憲法の規定する人権保障原則に反するおそれが極めて高いと考えられ、精神障害者のみにこれを科すとすれば法の下の平等の原則に抵触します。しかもそれが不確かな「再犯のおそれ」に基づくものなのです。

 第二は、事実認定における手続的保障が不充分であるということです。対象行為とされるものは、放火、強制わいせつ、強姦、殺人、強盗(これらは未遂も含む)と、傷害です。ここで、未遂が含まれるということはかなりあいまいな行為まで対象とされる可能性があります。傷害も幅広い概念なので、対象がいくらでも広がるおそれがあります。このように、対象となる行為の範囲が広範かつ不明確です。また、通常の刑事裁判でもえん罪が存在することはこれまでも明らかにされていますが、この法案では、刑事裁判で行われている事実認定手続すら保障されていません。この法案が定める手続きは憲法31条以下で保障された適正手続きとは到底言えず、充分な証拠調べもなされないまま、やってもいないことをやったとされてしまう危険性があります。付添人という形で弁護士をつけることはできますが、証人申請の権利も認められていないなど、防御権が保障されているとは言えません。

〈5月6日集会にご参集を〉
 「心神喪失者医療観察法案」には、精神障害当事者、その家族、精神科医等の医療従事者、弁護士、法律学者、司法の現場で働く人等々、様々な立場から、多くの人が反対しています。

 それぞれの立場の違いから、いくつかの主張の相違はありますが、ともかくこの法案に反対であるということで一致できた者が、緊急の実行委員会を作り、来る5月6日に集会を開いて反対の声を上げていくことになりました。ぜひ多くの方にご参加いただきたいと思います。
★「街」では、50人動員の方針を出しました。僕たちが暮らす、約5万人の地域の中で、50人を集められなくて、どうしてこの悪法案をつぶすことができるのでしょうか? 言葉だけでなく、本気になって地域の人たちと切り結んでいくこと、確かに、さまざまな意見が出てきます。でもそれは、訴えかけたからこそ出てきた課題なのです。いうならば「勝利に向かっての課題」なのです。それを毎日のミーティングで話し合いながら、明日の活動に繋げています。

 「こんな法律を許したら、殺されてしまう!」そういう思いで、毎日、知人・友人に電話し、店の前で訴えています。 昨日現在では、半分の25名の参加が決定しました。あと、半分だ。50人動員、必ず実現させよう (^o^)丿


近畿日本ツーリストクラブツーリズム国内旅行センター責任者 殿
 前略 さっそくながら申し上げます。
このたび、貴社が取り扱われております「JAL プライベートリゾートオクマに宿泊―沖縄ワイド大周遊4日間」を申し込み、2月18日から21日までの旅行契約をいたしました。

 申し込み及び契約時において、とても楽しみにしておりました旅行に出かけましたが、旅程の最後になりまして思わぬ
事態となり、予定の21日に帰宅できない結果となりました。しかも変更理由や、その説明を含めた貴社の対応に納得がいきません。その後のご連絡もいただけず、楽しいはずだった旅行が不快と憤りとを心に刻むものになってしまいました。改めて契約時にいただいた<ご旅行条件>なる貴社の旅行業約款を読み直しましたところ、貴社社員の接客対応に対する不信を抱くばかりか、契約の当該条項にも抵触するおそれも十分にあるものかとも判断する次第です。

 先ずは下記の点につき調査くださり、ご連絡をいただきますようにお願いいたします。

1、旅程の二日目の途中からバスの座席位置を添乗員・増田裕弘氏の指示により変更されたことの理由をお教えくだ
  さい。また、私どもにその理由を説明されなかった理由もお教えください。

2、旅程中は上記1以外、変更なく進行したのに、復路の飛行機搭乗の段になって、旅行会社の者からの説明もなく、し  かも空港内喫茶室という公然の場で空港の保安係の者にいきなり精神病者であるために飛行機には搭乗できない
  と言われました。「旅行内容の変更」については<ご旅行条件>の第4条に説明責任が記載されておりますが、実  際に私どもは説明を受けておりません。

3、また、当ツアー全体の旅行内容が変更になったのではなく、2名だけが搭乗できないと言われた次第です。また、宿  泊延長も貴社の対応により指示されましたのでその宿泊費用も発生しました。合わせて考えますに、第10条の「お  客様への責任」と第13条「旅程保証」に反すると判断いたします。

4、現在までの貴社の対応をみますと、根拠にされているのは全日本空輸株式会社の運送規定かと思われますが、今  回の事態に関しまして貴社と全日本空輸株式会社との責任の所在をどのように考えたらよいのかをお教えください。

 今回の事態につきましては、貴社の沖縄全日空カウンター係りの清田恵子氏からの病院への問い合わせ及び、全日 空沖縄空港旅客課から求められた書類の交信がありました。すでに2人の問題ではなく、全国の仲間達が心を砕か  れる問題として広く注目をされています。今月中に文書にてお返事をいただきたくお願いいたします。      早々

               2002年3月19日                        池辺 進 ・ 大石正文



★5・6集会に向けて、共同作業所めぐりをしようと、何年振りかで、「あとりえ トントン」に電話をした。話の中で
 全日空のことを話したら、私たちにもあったと、次のように話してくれた。
 おまえもか、日航 (-_-メ)
 1994年の6月。2泊3日の沖縄旅行を予定し、知り合いの旅行会社に依頼した。その後、旅行会社からの連絡
がない。沖縄では共同作業所との交流予定があったので、時間を知りたいと問い合わせた所、「精神障害者」は
搭乗させられないという事で困っているとの返事。

 日航から「搭乗するなら、一筆書いてほしい」という事で顧問医に相談したが医者も「そんな話は聞いた事がない」
と言う。日航に抗議して、幹部会議にあがったが…とにかく「危険なので、一筆書いてくれないとダメだ」と言われ、
沖縄での交流の予定もあり、怒りながら一筆書いた。

 作業所に実習生が来ると、必ずその話をします。     あとりえ・トントン 尾崎さん 談
障害者欠格条項をなくす会 ニュースレターを見ていたら、
(1) 「航空従事者」は、「重大な精神障害又はこれらの既往症その他航空業務に支障を来すおそれのある心身の欠陥」がある者は、その   仕事に就くことができない
(2) 「一般旅客自動車運送事業者」は、付添人を伴わない精神障害者に対しては、運送の引き受け又は継続を拒絶することができる
(3) 「動力車操縦に係わる運転免許」は、視力、聴力、神経及び精神、言語、運動機能障害がある者は、免許をとることができない
(4) 「海上運送法」は、事業者が付添人のいない精神障害者に対しては、海上運送契約の申し込みを拒絶することができる
(5) 「海技従事者」国家試験の学科試験は、身体検査に合格しない者に対しては行わないとし、その基準を「心臓疾患、てんかん、精神障害、奇形、四肢の欠損、運動機能障害その他の疾病又は身体障害がないこと」または「軽症」であること
(6) 「水先人」試験の学術試験は、身体検査に合格しない者に対しては行わないとし、その基準を「重い疾病又は身体障害(てんかん、精神障害、言語障害を含む)のないこと」
(7)  船員法に基づく「船員」は、てんかん、精神障害、知的障害(重度・中度)、言語機能障害、視力障害、聴覚障害、四肢・体幹障害をもつ者は、その程度及び職務により就業できない
(8)  「通訳案内業者」は、精神障害をもつ者には免許が与えられない
(9)  運輸大臣は、「地域伝統芸能等通訳案内業」を営もうとする者が精神障害をもつ者であるときは、その認定をしない
 なに、一人じゃ、飛行機だけじゃなくて、バスにも、電車にも、船にも乗れないと言うことかい。ということで「Yahoo」で検索してみた。「海上運送法」は省略されていて探せなかったが、「一般旅客自動車運送事業者」のことを検索したら、「旅客自動車運送事業等運輸規則」というのが出てきた。いつ制定された法律かは出ていなかったが、確かにこうある。

(運送の引受け及び継続の拒絶)
第13条 一般旅客自動車運送事業者は、次の各号の一に掲げる者の運送の引受け又は継続を拒絶することができる
1 第49条第4項の規定による制止又は指示に従わない者
2 第52条各号に掲げる物品 (同条ただし書の規定によるものを除く。) を携帯している者
3 泥酔した者又は不潔な服装をした者等であって、他の旅客の迷惑となるおそれのある者
付添人を伴わない重病者又は精神病者
5 伝染病予防法 (明治30年法律第36号) による伝染病患者

 何たる差別だ! もう怒ったぞ! 


ハネやん、「街」のみなさん
ホームページ見ました。
更新、ありがとうございます。

15年と1ヵ月《鬼念》は、
管理職15、6人にやられ放題、
警官6名、私服3名でした。

突き倒されて、さすがに身体を本格的に
こわしたようです。

5/6は、おもいっきり、XXXXしてきてくださいねェ〜

えばっち
002740
診 断 書
  住所   (略)
        氏名 江端 一起 殿
  生年月日 (略)
病名 左肩捻挫、肩腱板損傷、左膝・両腿打撲、
    上記病名にて、約弐週間の通院・加療を
    要する見込み。
     (受傷日 平成14年4月9日 患者申告)
  上記の通り診断いたします。
  平成14年4月9日
  医療法人 松濤会
共 和 病 院
京都市伏見区醍醐川久保町30
TEL (075)573-2122(代)
医師 添田 晴雄 印

簡保当局よ、タダじゃおかんからな。
えばっちが「いつか、全逓と当局に、【テロリズム】の嵐が吹き荒れる」
って書いてあることを忘れるなよ!


精神科医療懇話会声明第4弾
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」に反対する
                2002年4月3日 精神科医療懇話会
目 次
  はじめに
T.法案の全体像に対する批判的概観
U.逐条批判
U‐1)「再び対象行為を行うおそれの有無」について
U‐2)事実審理における問題
U‐3)医療的判断に裁判官が参加する問題
U‐4)指定医療機関の問題
U‐5)地域処遇における適切な人材確保の問題
U‐6)医療機関における治療と処遇の問題
U‐7)被害者救済問題との混同
U‐8)解決すべき「入り口問題」を無視している
V.法案に至る経過の再整理と今後に向けての検討
V‐1)法案に至る経過と新たな論点
V‐2)刑事局案との相違
V‐3)法案は何をもたらすのか?
V‐4)今後に向けて
付録1:犯罪予測と偽陽性判定の問題
付録2:法施行後の医療機関と精神科医の動向をシミュレートする
精神科医療懇話会
               連絡先:京大病院精神科 高木 俊介・吉岡 隆一

                      E-mail:shun-t@mbox.kyoto-inet.or.jp
<共同提案者>
磯村大(堀ノ内病院)大下顕(京都博愛会病院)岡潔(旭労災病院精神神経科)
太田順一郎(岡山大学精神科)岡崎伸郎(仙台市精神保健福祉総合センター)
瀬川義弘(関西青少年サナトリウム)高木俊介(京都大学精神科)
塚本千秋(岡山大学教育学部)中島直(多摩あおば病院)浜垣誠司(高木神経科医院)
望月清隆(積善会曽我病院)森俊夫(京都府立洛南病院)吉岡隆一(京都大学精神科)
はじめに
 3月15日、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」が国会に上程された。昨年6月9日に起きた大阪池田小学校事件を契機として始まった立法化への動きは、この法案の提出によりその最終局面を迎えようとしている。わずか9ヶ月という異例のスピードでの法案上程を可能にしたのは、池田小学校事件が与えた衝撃の強さによるものであるが、この間に池田小学校事件の被告が起訴されたことにより、この事件と本法案は直接のつながりを失っている。それにもかかわらず、法案作成作業のみが一人歩きを続けてきたのである。このことは、法案が精神障害者一般に対する危険視という偏見を背景にしていることを物語っている。

 私たち精神科医療懇話会は、こうした動きに危機感を覚え、昨年6月27日、7月20日、及び9月18日の三度にわたり声明を出し、司法と精神科医療がそれぞれに抱えている問題こそがまず解決されなければならないということを主張してきた。しかし、最終的に上程された法案は、医学的に不可能なはずの再犯予測を判断基準として、不定期に拘禁することを可能とする、考え得る限りの最悪の内容であった。この法案は、立法に最低限必要とされる公正さや法的正義さえ欠いている

 懇話会声明でも触れてきたように、司法と精神科医療の双方が改善すべき点は多い。問題の解決はその延長上にしかないはずである。私たちは医療従事者としての職業的責務と倫理において、この法案に反対する。法案をいったん白紙に戻し、丁寧な議論を積み重ねていく以外に選択肢はない

 この声明は次のように構成されている。最初に法案の全体像を概観する。次に、いくつかの主要な論点を抽出し、それに沿って逐条批判を行うことでこの法案の問題を明らかにする。最後に、法案に至る経過を再整理しながら今後について若干の検討を加える。

T 法案の全体像に対する批判的概観

法案は、全6章と附則から構成されている。主要な部分は第1章総則、第2章審判、第3章医療、第4章地域社会における処遇の4章であり、それに第5章雑則、第6章罰則、及び附則が加わる。

1)法案第1章 総則 〜法の目的と定義
★法案の目的は「再犯予防」である
 第1章総則には、「同様の行為の再発の防止を図ること」と「社会復帰を促進すること」という2つの目的と、「対象行為」「対象者」「指定医療機関(指定入院医療機関と指定通院医療機関)」「精神保健審判員」「精神保健判定医」「合議制」「精神保健参与員」「精神保健観察官」などの新しい言葉・機能の定義と説明が記されている。

 法の対象は、未遂を含む殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ、傷害に該当する対象行為を行い、心神喪失又は心神耗弱を理由に不

起訴となった者及びそれを理由に裁判で実刑判決を受けなかった者等と定義されている。

 法律上、この「同様の行為の再発」を「再犯」と呼ぶことは適切ではないにしても、その趣旨としては「犯罪にあたる行為の再発」である。したがって、この法律の目的は、「再犯の防止」であるということができる。(以下、この声明では、法文上の「同様の行為の再発」を「再犯」とする。)

 この法案は、「再犯防止」という法の目的に添ってその後の流れを決定しているものであるが、以下、第2章から第4章までをその流れに沿って概観する。

2)法案第2章 審判 〜検察官による申し立てから審判段階における問題
★検察官の不起訴による現状の問題点は何ら解決されない
★★「再犯のおそれ」を判断基準とした審判は不可能を要求している

 対象者と認定するのは検察官であり、検察官が地方裁判所に申し立てを行うことによって、手続きが開始される。この点については、私たち懇話会を含む多くの論者が、@対象行為の存否の認定があいまいであること、A心神喪失・心神耗弱の判断が恣意的であるという、起訴便宜主義に起因する問題点を繰り返し指摘してきたが、この点の改革については一顧だにされていない。

 検察官による申し立てを受けた地方裁判所は、1人の裁判官と1人の精神科医(精神保健審判員)との合議体でこの事件を扱う。例外を除けば裁判官の命令による鑑定入院(2ヶ月、3ヶ月まで延長可)を経て、「入院命令」「通院命令」「この法律による医療を行わない」という3つの判断のうちから最終決定がなされる。そのための判断基準は「将来にわたる再犯のおそれ」の有無とされ、再入院も含めて再犯予測はこの制度の骨格部分を占めている。

 したがって、この制度の是非を論じるためには最低限「再犯予測が可能であること」が前提となる。しかし、再犯予測が不可能であることは、既に多くの論者によって主張されてきた。さらに、再犯予測が可能であるとする根拠は全く提出されていない。できないことを要請される合議体にとって、「再犯のおそれはない」と判断することは論理上不可能となる。審判とはいうものの結論は最初から決定されており、3つの最終決定のうち入院命令が圧倒的多数を占めるであろうことは想像に難くない。

 もう一つの問題は、入院命令をはじめとする処分の終了も「再犯のおそれの消失」が判断基準となることである。この判断もまた不可能であるから、上限が設定されていない入院命令は、事実上不定期の拘禁として機能することになる。

3)法案第3章 医療 〜入院医療における問題

★「再犯のおそれ」により拘禁することは医療を逸脱した行為である
 医療は、鑑定命令入院、入院命令、通院命令の3つの領域でこの法案に関与する。厚生労働大臣の指定を受けた指定入院医療機関及び指定通院医療機関が、入院命令及び通院命令の受け皿となる。指定通院医療機関は診療所も含め対象は広いが、指定入院医療機関は国公立及び独立特定行政法人に限定される。鑑定入院命令の受け皿は特に規定が設けられていないので、国公立に限定されず全ての精神科医療機関が対象となりうる。

 指定医療機関の精神科医には、入院・通院を問わず、常に「再犯のおそれ」に関する判断と責任が求められる。入院の場合には「再犯のおそれが消失した」と判断しない限り、6ヶ月ごとに地方裁判所に入院継続の確認を求める申し立てが課せられ、それは当事者が死を迎えるまで反復される可能性がある。通院命令は3年間であるが、やはり「再犯のおそれが消失した」と判断しない限り保護観察所の長に通知義務があり、結果として2年を越えない範囲で通院命令は延長されることになる。また、入院治療に切り替えなければ「再び対象行為を行うおそれがある」と認めたときには保護観察所の長への通知義務が課されている。

 「再犯のおそれ」を判断することも「再犯のおそれの消失」を判断することも不可能であることは既に述べた。入院命令の延長、通院命令の延長、通院命令から入院命令への切り替えといった「拘禁の連鎖」が生じることは必至であるとみなさなければならない。それは、明らかに医療の本来の役割を逸脱している。

4)法案第4章 地域社会における処遇 〜強制通院医療の問題
★地域処遇の本質は再犯防止のための監視である
 検察官による地方裁判所への申し立ての結果通院命令がなされた場合、入院命令が終了し退院が決定すると同時にその後に引き続く通院命令がなされた場合、つまり通院命令による強制的外来治療について記述されているのがこの章である。

 通院命令は通常3年、最長5年を拘束し、その間いつでも入院命令に切り替えられる可能性があることについては前項で触れた。管轄するのは本来医療とは関係のない保護観察所であり、そこで作成される「実施計画」に基づいて医療、精神保健観察、援助がなされる。精神保健観察とは、保護観察所に新しく置かれることになる精神保健観察官によってなされるものであり、該当者は通院命令の期間を通してこの精神保健観察に付される。

 この命令を受けている者は、実施計画に基づく指定医療機関での通院治療、保護観察所への居住地の届け出、一定の住居に居住すること等の義務が課される。この章の表題である「地域社会における処遇」という問題には、そもそも「援助」と「監視」という2つの要素が含まれるはずだが、援助については精神保健福祉法を越える内容は何もなく、「再犯のおそれ」に基づく監視のみが突出している。仮に、この法案の目的の一つである対象者の社会復帰が真剣に検討されたのであれば、援助にこそ重点が置かれなければならないし、刑事政策を担当する保護観察所を中心に据える発想が生まれるはずもない。この法の目的には再犯防止と社会復帰の2つの目的があげられているが、社会復帰は露骨さを消すための隠れ蓑に過ぎず、純粋に再犯防止を目的とした法律と言えよう。

 以上、法案の構成に沿って全体像を概観した。法案を要約すれば、事実認定さえなされずに不確かな心神喪失・心神耗弱判断に基づいて申し立てがなされ、不可能な再犯予測を判断基準とすることにより、結果として不定期の拘禁を可能とする法律である。

 以下に、主要な論点に沿って法案の逐条的批判を行うことで、問題点を明らかにする。

U.逐条批判
U‐1)「再び対象行為を行うおそれの有無」について
★再犯予測は不可能である
★★誤った予測による不当な拘束が行われる

 第一条、この法の「目的」は、「これに伴う同様の行為の再発の防止」であると明記されている。この目的に沿って法案では、「再び対象行為を行うおそれの有無」についての鑑定を精神科医に対して求めている(第三十七条)。つまりこの法案には、精神科医に「再犯予測」の役割を担わせるものである。しかし、私たち懇話会もこれまでの声明で再三述べてきたように、再犯予測は不可能である。そればかりではなく、もしもこの不可能であるはずの再犯予測を強行したとすれば、多くの偽陽性(false positive)判定を受ける人が生じること、すなわち「本当は再犯の可能性がないのに誤って再犯のおそれがあると予測されてしまう人が必ず生まれる」ということにも警鐘を鳴らしておかなくてはならない。

 例えば、1000人に1人の人が対象行為となる犯罪を犯すとして、それを95%の正確さで予想できる方法があったとする単純なモデルで考えても、人口10万人のうち5000人以上の人を隔離することになり、そのうちの98%もの人が偽陽性者として誤って隔離されてしまうことになるのである。(計算の実際は付録1を参照のこと)

 一般人に対してこのようなことを行うことはとうてい許されない。精神障害者だから許容されるのだとすれば、それは差別である。これが「治療」の名のもとで行われるとすれば、それは精神科治療への冒涜である。

 現行の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)の29条に規定された措置入院は、「自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれ」(自傷他害のおそれ)に基づいての都道府県知事による強制入院(措置入院)を定めている。この「自傷他害のおそれ」の判断ができるのであるから、再犯の予測も可能であり、実際にも精神科医がこの判断を行っているではないかという反論がある。しかし、自傷他害のおそれの判断は、現在及びごく直近の将来についてのものであり、しかも病状に基づいて行われる行為に限定される。月単位や場合によっては年単位の見込みを必要としている「再犯予測」とは、本来異なるものである。しかも、「再犯」にあたる行為が、必ずしも狭義の病状に基づくものであるとは限らないのである。

 今回の法案には、1970年代から80年代にかけて議論された保安処分と数々の類似点がある。時の行政・与党等の強い要請がありながらも保安処分が実現に至らなかった最大の理由は、この再犯予測の問題であった。今回法務省や厚生労働省、及びその周辺にいる人々が、この法案を推し進めるのであれば、再犯予測が可能になったという証拠を提示しなければならないだろう。しかしそのようなデータは一切出されていない

 このような鑑定が現実的に行われるようになった場合は、どのような精神科医がこれを行うであろうか。今日でも精神鑑定を行う医師は限られている。このような鑑定を引き受けるのは、「再犯のおそれは鑑定できる」とする一部の「精神医学者」ばかりになるであろう。また第六条に定める「精神保健審判員」「精神保健判定医」についても、「再犯のおそれ」の予測困難性を熟知し、家族等周囲の要請に真摯に応えながら患者の福利を目指す臨床家であるならば、安易に引き受けることをためらうのは当然である。その結果、これもまた社会治安を優先する一部の「精神医学者」に集中してしまう可能性がある。

 第四十九条以下の退院の規定には、さらに問題がある。法案では、「入院を継続して医療を行わなくても心神喪失又は心神耗弱の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認めることができなくなった場合」(第四十九条)と、その解除についてかなり厳しい規定を設けている。三十七条に基づいて鑑定を行う精神科医は、対象者が精神病の急性期であり、病状に基づく対象行為があれば、入院とすることにそれほど大きな矛盾は感じないであろう。現行の措置入院の要否判定とほぼ同様だからである。しかし、措置入院であれば急性期が過ぎ病状が軽快すれば措置解除とすることができるのに対し、本法案に基づく入院制度はこれと異なる。急性期が過ぎ、既に入院医療を要する状態は脱していても、また病状が再燃し、それが同様の対象行為をもたらす可能性が少しでもあれば、退院させることができないのである。まさに「入るは易く、出るは難し」という制度なのである。

U‐2)事実審理の問題
★対象者と対象行為に関する事実審理が不充分となる
★★対象者の弁護権が保証されていない

 第二条第2項において、放火、強制わいせつ、強姦、殺人、強盗等及びその未遂と、傷害にあたる行為という形で、この法案における「対象行為」が規定されている。「未遂」が含まれ、また傷害に含まれる対象行為の広さから、非常に広範囲の対象を含むことになる。

 同条第3項においては、「対象者」が規定されている。その2は心神喪失による無罪等の判決を受けた者も含むことを規定しているものであるが、現状ではその数は非常に少ない。そのためより重要なのは一、すなわち心神喪失ないし心神耗弱によって不起訴とされるもの、すなわち「公訴を提起しない処分において、対象行為を行ったこと…が認められた者」となる。第二十四条の2を見ると、不起訴処分をされた者が対象行為を行ったこと及び心神喪失者等であることの判断は、合議体の裁判官が行うこととされている。しかし、事実の判断は、本来、裁判において、検察官及び弁護人立ち会いのもと、厳格な手続きで採用された証拠を入念に調べることを経て行われるものである。そして、それにもかかわらず精神障害者にはえん罪がかけられる可能性が高いことは、無実の元死刑囚赤堀政夫さんの例に代表されるとおりである。やってもいない行為を「自傷他害のおそれ」の根拠とされ措置入院とされる例も指摘されている。その現行の手続きすら省略した審理で、人身の拘束を決定するなら、今まで以上にえん罪を増やしてしまう可能性が高い

 付添人として弁護士をつけることができることは規定されている(第三十条)が、第二十五条の2において「資料を提出することができる」とされているほか、弁護権は保障されていない。弁護士には証拠の閲覧も制限され、謄写は裁判所の許可がある場合という例外を除いては原則として行えない(第三十二条、第三十二条の2)。これに対し、刑事訴訟法では、第四十条等で閲覧及び謄写の権利が明記されている。保護観察所長は簡単に鑑定書等の資料の提供を求めることができる(第二十三条)ことから考えると、これはプライバシー保護を目的とし

た制限とは考えられない。事実関係について争う可能性があるほか、高度な精神医学的内容も含む精神鑑定の検討等を、謄写なしで、いかに行い得るだろうか。弁護権は保障されていないのである。

 付添人がない場合も、弁護人をつけることが裁判所の義務とされているわけではなく、「付添人を付することができる。」(第三十条の3)との規定にとどまっている。検察官から本法案に基づく入院や通院の決定を求める申請がなされたら、そのときには付添人をつけなければならないとの規定になっている(第三十五条)ので、刑事訴訟法で被疑者の段階では弁護人は不要で、被告人の段階で必要とする規定に類似している。つまり、鑑定入院(第三十四条)の段階では付添人がついていない可能性が高いことになる。しかし、そもそも被疑者の段階から弁護人が必要であることは以前から主張されており、それがなされていないことがえん罪の温床になっているのである。近年は弁護士会の努力でそれがカバーされているが、必ずしも充分ではない。まして、本法案の対象者の場合、捜査段階での自己弁護能力が不十分である可能性が高く、経済的にも恵まれていない者が多いと予測される。いったん検察官からの申請がなされれば、一気に入院の決定まで進む可能性が高いのであるから、申請前の弁護活動は重要である。

 対象行為の存否についての審理を別に扱うことを規定している第四十一条においても、事実審理が緻密に行われるという保障はない。弁護権の欠如は同様である。

 審判が非公開とされている(第三十一条)ことは、対象者のプライバシーを保つことには役立つかもしれないが、暗闇の中の裁判がなされる可能性も危惧される。

 本法案による入院には期限がないから、要するに、このままでは、やったかどうかわからない行為によって無期懲役に等しい拘束期間が科せられる可能性があるということになる。

U‐3)医療的判断に裁判官が参加する問題
★裁判官の参加は、医療をより拘束的にする
 第十一条は、処遇事件を扱う地方裁判所の合議体が、裁判官と精神保健審判員で構成されるとしている。強制入院・強制通院の決定や、その継続ないし終了は、仮にそうしたものを認めるという立場に立つとしても、医療的判断のはずである。これに、医学的には素人である裁判官が加わることの意味が明らかにされていない

 本来医療判断であるべきものに裁判官を加えれば、対象となった人を解放して問題が起こったときに受ける批判に配慮して、より拘禁を継続させる方向に働くであろうことは想像に難くない。

 精神科医には再犯の予測ができないが、裁判官には可能である、という趣旨かもしれないが、そうした主張の根拠は全く示されていない。逆に例えば、裁判官によって執行猶予判決を受けた人のうち、その10〜30%におよぶ人々は再犯を犯して執行猶予を取り消され刑に服するという事実があるのである。

 そもそも本邦の裁判官は、起訴された事件の99.9%を有罪とし、勾留請求や令状などについてもほとんど検察官の主張を認めるのであり、主体的な判断を行うことが非常に少ないと言わざるを得ない。裁判官の関与を認めることが、形式的にはともかく、実質上、何らかの改善をもたらすと考えるのは幻想でしかない。

 第十四条で、評決は、「裁判官及び精神保健審判員の意見の一致したところによる。」とされているが、一致しなければどうなるかについても明確にされていない。

U‐4)指定医療機関の問題
★現場の医療機関の意向を無視した指定
 第十六条で、指定入院医療機関は、国公立病院に置かれることとなった(特定独立行政法人の規定は何を指すのか明らかでないが、平成16年度に独立行政法人に移行予定の国立病院・療養所を指すものか)。「開設者の同意」が必要とされているが、国公立病院の開設者は、院長などその施設の現場で働く者ではなく、国や県知事であり、現場の意向は無視されている。国立精神療養所院長協議会、全国自治体病院協議会は、精神科七者懇談会の一団体として、あるいは独自に、法案に反対の意思を明らかにしているが、これにもかかわらず強行されるおそれがあるのである。

U‐5)地域処遇における適切な人材確保の問題
★医療として適切な人的資源が確保されていない
 保護観察所はもちろん精神科医療の枠内に存在するものではないし、精神障害者が地域で生活する際のサポートのノウハウを持っているわけでもない。人員も充分とは言えない。通院制度をフォローする主体となるには不適格なのである。不充分なフォロー体制しか整えないままで制度を強行すれば、当然、審判は入院の決定が多くなるであろうし、入院を終了させ通院医療に切り替えることにも慎重にならざるを得なくなり、長期に拘禁されることとなる。

 精神保健福祉士等から指定される精神保健参与員(第十五条)、保護観察所に置かれる精神保健監察官(第二十条)も、どのように確保するのか明確でない。

U‐6)医療機関における治療と処遇の問題
★対象者に対する特別な治療は存在しない
★★治療中の人権保障が不十分であり、医療の密室性が温存される

 「指定医療機関」という規定はあるが、そこでどのような医療が行われるのかが明確にされていない。第八十一条の2の規定は「診察」「薬剤又は治療材料の支給」「医学的処置及びその他の治療」などとされているが、一般的かつ包括的なものに過ぎない。一般の医療であれば、一般の病院で行えばいいことである。一般の病院では人員が不充分であることはあろうが、これは精神科の病院は他の科の病院よ

りも人手は少なくてよいとするいわゆる「精神科特例」の温存を始めとして、精神科医療の人員整備を怠ってきた厚生省(現厚生労働省)の責任である。

 もし特別な医療を行うのであれば、その内容を明らかにしなければならない。一般に、専門的な医療というのはあり得るが、それは診断名や年齢層、疾患の特徴などで規定されるものであり、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者」全体にあてはまる特別な治療法などというものは存在しない

 治療中の人権保障についても明確でない。通信・面会の自由保障は精神保健福祉法と類似した規定が記されている(第九十二条)。しかし、処遇改善請求にあたる規定(第九十六条)では社会保障審議会がその任にあたることになっているが、どの程度迅速な審査が行えるか明らかでない。退院請求は一度却下されると3ヶ月は行えない(第五十条の2)。これについて合理的な根拠は示されていない。

 本邦の精神病院が過度に閉鎖的であることは言うまでもないが、矯正施設の閉鎖性はそれに輪をかけている。生命に関わるような重大な事件や問題が、内部告発によって初めて明るみに出ることも珍しくない。処遇に矯正施設のノウハウを持ち込むことが予想されるこの医療機関では、深刻な人権侵害が多発し、内部告発がなければそれが隠匿されるおそれが非常に大きい。

U‐7)被害者救済問題との混同
★被害者の救済とは、加害者の人権を制限することではない
 今回の検討は、2001年6月の池田小学校児童殺傷事件を一つの契機として行われたものである。しかし、そもそもこの事件の被告人は、後の報道等では「精神障害を装った」などともされており、いわゆる触法精神障害者の議論の契機とするに適切な事例とは考えにくい。法案が提唱する制度が仮にできたとしても、それが適用される人ではない可能性が高い。仮に法案が提唱するような制度が以前からあったとしても、この事件を防止し得たとは考えにくい。

 マスメディアで騒がれるような、精神障害者が引き起こした重大な事件は、大多数が初犯である。法案が提唱する制度は何か事件が起こって初めて発動されるものであり、初犯には全く効果がない

 第四十七条の被害者等の傍聴の規定もその根拠が不可解である。そもそもこの法案は、責任能力がなく応報刑には馴染まない対象者に対して規定するもののはずだが、非公開である(これに問題があることは前述した)はずの審理に被害者等の傍聴を認める根拠は、応報感情以外にはあり得ない。被害者救済は本来別問題のはずである。

 したがって、この法案は、厚生労働省と法務省が合同研究会を開きはじめたところであったように、ようやく議論が端緒につきはじめていた問題に対して、拙速な解答を行っただけであり、将来に禍根を残すものとなるであろう。

U‐8)解決すべき「入り口問題」を無視している
★安易な起訴前簡易鑑定などの本質的な問題は解決されていない
 多くの論者から、検察官による安易な不起訴によって引き起こされる問題、いわゆる「入り口問題」によって精神科医療の守備範囲が不当に広げられていることが、現在の本邦の司法と精神科医療の現状が持つ最大の問題点であることが指摘されており、私たちも再三このことについて批判してきた。しかるに、この法案はこれには一切手をつけていないのである。

 第三十三条の3において、限定付きながらも、検察官の裁量を認めている。対象行為を行ったと認められない場合、心神喪失者及び心神耗弱者のいずれでもないと認める場合については申し立ての却下(第四十条)を、検察官が心神喪失者として申し立てを行ってきた対象者について心神耗弱者と認めた場合にはその旨の決定と告知(第四十条の2)が規定されているが、検察官の言い分に反する判断等をほとんどすることのない本邦の裁判官が、この規定を活用して「入り口問題」の解決に寄与するとはとうてい考えられない。むしろ、医療適応性の判断が不明確となり、薬物依存や人格障害とされる人など、本来精神科の非自発的医療には馴染まない人々が、ますますこの制度に投げ込まれるおそれが非常に高い。

 第三十七条に基づく鑑定は責任能力の有無がその課題となっていないから、この鑑定が「入り口問題」の解決の助けになることは保障されていない。また、送検すらされず、警察官の段階で処理され24条通報などの形で精神科医療に送られる人々の中に、実は刑事手続きの中で扱われるべき人が多数存在することも指摘されているが、それについても何ら有効性を持たない。

 さらに、私たちが従来指摘してきたように、刑務所等の矯正施設内での医療の改善も緊急の課題であるが、これにも一切言及されていない。

V 法案に至る経過の再整理と今後に向けての検討
V‐1)法案に至る経過と新たな論点
 この問題には前史がある。一つは70年代から80年代にかけて論争が繰り広げられた刑法改正−保安処分新設問題であり、もう一つは精神保健法成立を契機とした90年代前半の処遇困難者病棟問題である。前者は法務省、後者は厚生省(現在の厚生労働省)が推進しようとした動きであったが、ともに失敗に終わったことで、この後の両省の動きを規制する経験となった。

 今回の流れは、法務省と厚生労働省の合同検討会をスタートさせた'99年法改正(精神保健福祉法)付帯決議を直接の起点としている。これまでの論点にはなかった新たな要因として、90年代中旬以降の精神科医療機関の機能分化、国公立と民間病院の役割分担論、犯罪被害者及び遺族の問題、医療訴訟をめぐる動向の変化、責任能力論への関心の高まり等が加わった。また、24時間の行政救急を担う基幹病院の出現と経験は、トリアージュ機能の強調と共に、精神科医療の守備範囲を明確にしようとする機運を生み出した。その焦点は、疾患としては人格障害と薬物依存、「入り口」としては24条通報と25条通報であり、必然的に杜撰な簡易鑑定と起訴便宜主義への批判を含むものであった。こうした状況にあって、司法と精神科医療が抱える問題をはじめて包括的に提示したのが2001年5月に開かれた日本精神神経学会総会シンポジウムであった。今後の議論の枠組みを示し新しい地平を切り開いたという意味において、時代を画するものであっ

たといえよう。私たち精神科医療懇話会のこの間の声明作成作業も、このシンポジウムに大きく依拠している。

 法務省と厚生労働省の合同検討会は、前史における失敗の経験から相互に責任の押し付け合いに終始していた。このことは、状況の変

化に対応した新しい提起を行いうる準備も意思も、双方に欠けていたことを物語っている。しかし、大阪池田小事件が事態を一変させることになる。政府の対応は素早く、与党3党プロジェクトチーム、自民党プロジェクトチームが独自に作業を進、最終的には昨年11月に与党3党案、自民党案、公明党案を折衷する形で与党案としてまとめられた。

 与党案の骨子は、「重大な犯罪を起こした精神障害者を検察官からの申し立てによって、裁判官の関与する判定機関の審判に付しその決定を受けて、精神障害者の処遇(すなわち入院、保護観察下の通院)を国公立病院内の専門治療施設に委ね、そこからの退院や強制通院の終了は、判定機関が決定する」といったものであり、現在の法案を直接的に準備する内容となっていた。法案を提起するに足る蓄積がないところで、精神障害者の犯罪にのみ焦点をあてた立法化を至上命題とする姿勢からは、当然予測されうる結論であった。

 ただしこの時点では、不起訴数の多さをあげて検察庁における安易な不起訴処分乱用の疑念にも触れている(自民党案)ことや、精神科医療の貧困さや退院後の援助の希薄さにも言及していることなど、司法と医療双方の現状の問題点を認識し、それを改善するための契機を含んだ内容であったと見ることもできる。

 ところが本年2月に公表された「法案骨子」からは、そのような現状改革的な視点は全く抜け落ちていた。「骨子」は、与党案があいまいにしてきた法の目的と判定機関における判断基準を、それぞれ「再犯防止」と「再犯のおそれ」と明言し、保安処分としての性格を強く前面に押し出した内容であった。法案国会提出のわずか1ヶ月前のことである。国会における絶対多数を背景に、国民に議論する時間を与えない政治的暴挙については、厳しく指弾されなければならない。国会論議では、与党案作成者たちが「再犯防止」と「再犯のおそれ」を意図していたか否かが明らかにされる必要がある。最初から意図していたのであれば与党は国民を騙したことになり、意図していなかったのであれば、新たにその意図を忍び込まされている今回の法案が批判されるべきである。

 政府―与党は、議論の水準を大きく後退させ、新しい論点の多くを捨象することで司法と精神科医療の問題を改善する可能性を消し去ろうとしている。そしてその政治手法とともに、依然として政策提言型の運動が成功しづらいことも銘記しておく必要がある。

 さて、法案は広範な反対運動によって頓挫したかつての刑事局案に酷似する以上、その刑事局案との相違について触れておく必要がある。 

V‐2)刑事局案との相違
法案に見られる罪種の限定や処遇決定プロセスに関与する機関の構成などの形式は、保安処分特に刑事局案と類似している。刑事局案とは、法務省が提示してきた保安処分制度新設を含む刑法改正案に精神医学会や弁護士の反対が強かったため、それへの対応として法務省刑事局から'81年12月に出されたものであるが、依然として保安処分の一環としての性格を明確にしており、その目的が再犯予防であり、根拠を再犯予測可能性に置き、手続き的に刑事裁判が保安処分を言い渡すことを主眼とし(検察官が独自の手続きで言い渡すことは従と考えられていた)、弁護士が必ず関与しなければならず、期間を限定する姿勢を見せ、責任能力鑑定が必須というしっかりした骨格を持っていた。ところが今回の法案は、検察官を主導的地位に置き、事実認定及び防御権の保障が充分ではないこと、上限が設定されていないことで不定期の拘禁を可能にすること、予防拘禁を医療機関に担わせること等において、法的に適正な手続きを欠くものである。その点で、刑事局案以下の代物と言えるだろう。

 刑事局案以下のレベルに議論を後退させた政府の責任は極めて大きい。精神科医療の当事者はこの法案を前にすれば刑法三九条廃止を主張するよりなく、池田小事件の被害者・遺族が求めるであろう厳密な責任能力判断と適正な法的手続きにも背を向けることになろう。

V‐3)法案は何をもたらすのか?
 このような法案が立法化されればどういうことになるだろうか。検察官の安易な不起訴は改められるどころかむしろ拡大される結果、医療を受けることが適切かどうか不明確な人を含む多様な人々が、この施設に送り込まれることになるであろう。治療の理念もない以上、ただの「厄介者払い」の施設として運用されることになる。医療の内容が明確にされておらず、充分な人員配置の保障もないところで、見通しのない拘禁が行われることになろう。暴行などの人権侵害が横行する可能性もある。送られる人々の不幸は言うまでもない。施設はすぐにいっぱいになり、制度は動かなくなるであろう。

 触法行為を行った精神障害者への医療等に関する現行の運用に種々の問題があることは事実であるが、全ての例に問題があるわけではない。不幸にも触法行為により事例化したが、その後速やかに医療につながり、入院医療から社会復帰、通院医療へとのスムーズな流れにより、適切な医療と地域生活が保障される例も少なくないのである。

 しかし、この法案が実現すれば、多くの例がこの制度に機械的に流し込まれることとなる。本格的な治療が開始される前に鑑定入院が2〜3ヶ月行われ、疾病による苦痛が重い急性期への介入が不十分となる上、その後の治療入院との継続性は保障されていない。治療入院もその地域性は保障されておらず、むしろ自らの地域からは離れた医療機関で治療を受けさせられることになる可能性が高い。そして、通常の措置入院等であれば病状が軽快すれば退院できていたものが、本法案の第四十九条を厳格に守ると「対象行為を再び行うおそれ」が少しでも残されていると、なかなか退院できないことになる。ようやく退院となっても、指定医療機関への通院は、入院していた施設と同一とは限らず、地域性が保たれるかどうかもわからない。この制度は、これまで地道に積み上げられてきた臨床実践までも破壊してしまうものである。

 ここでは、法手続きに基づいて何が起こりうるかということを考察したが、現実にはそれ以上に、実際の受け皿となって医療を担う機関がどのようになるかということが重大な関心事であろう。そのため、これまでに厚生労働省が折に触れて公表してきた数値から、法案施行後


の医療機関と精神科医の動向をできる限りシミュレートしたものを、声明の末尾につけたので参照してほしい(付録2)。

V‐4)今後に向けて

この間の議論を総括して問題点をまとめるならば、結局「医療の権利と刑事手続きの機会の適切な調和」をいかに実現するか、に問題はまとめられる。再犯予測可能性がない現状からすれば、これ以外に問題の立て様はない。

法的観点から問題を整理すれば、刑罰の可能なものには刑罰を、刑罰の不可能なものにはその見極めを厳正に行う手続きを整備し、責任主義を維持することが原則になろう。

医学的観点からは、治療の必要性と可能性のあるものについては、その法的身分のいかに関わらず治療を提供するための機会を保障することが原則である。

法案の欠陥=現状の問題点を解決するためには、医学的判断を法的判断に独立、先行させ、明瞭に責任能力を欠くものを除いてはできるだけ厳格な責任能力等の法的判断を公開性の高い場で行い、もって起訴便宜主義を実質的に制約しつつ、治療必要性と可能性の高い緊急性を要する事例では刑事的手続きから医療処遇への身柄の転換を図り、刑事手続きが可能となった状態で法的判断の必要な場合なものは医療的処遇から刑事手続きへの身柄の逆送を制度的に保障するしかない。

 私たち精神科医療懇話会は、声明の第一弾、第2弾において、そうした方向性の重要性について強調し、また第三弾において、現状の簡易鑑定の問題を是正しつつ、早期に医療につなげる道筋をも確保するため、精神保健鑑定をスクリーニング鑑定として活用するという具体案を提示してきた。こうした手続き保障の中に位置づけられない「専門治療施設」は全く意義を持たず、対象者の人権を無視して医療を荒廃させるものである。したがって、私たちは断固としてこれに反対するものである。

付録1:犯罪予測と偽陽性判定の問題
 社会構成員の中で、1000人に1人が殺人を犯すとする。人口10万人でみれば、そのうち100人が「実は殺人を犯す人」で、残りの99,900人は「実は殺人を犯さない人」ということになる。仮に非常に正確なテストが開発され、95%の確率で殺人する人としない人を見分けることができたとする(これは人間の行動の予測としては考えられないぐらいの高率を想定していることになる)。人口10万人にこのテストを行うと、「実は殺人を犯す人」100人の95%にあたる95人がこのテストによって「殺人を犯す」とされ、「実は殺人を犯さない人」99,900人の5%にあたる4,995人が「殺人を犯す」とされることになる。「殺人を犯す」と認定された人を隔離するとすると、10万人のうち5,090人の人を隔離することとなるが、その何と98%以上にあたる人は実は隔離しなくても殺人を犯さないにもかかわらず隔離されることになるのである。海外のものも含め、再犯研究を検討すると、この偽陽性の事実は大きくのしかかってくる。

付録2:法施行後の医療機関と精神科医の動向をシミュレートする

 厚生労働省は、年間の対象者数を300人程度と試算し、全国で20から30の病棟を、国立を中心に10年程度で整備し、病床数を800から900床、回転がよければ600床程度と予定しているようである。25条通報件数が年間1000件強、そのうち措置該当件数が500件強であるから、対象行為に限定すれば300人程度となり、さらに入院命令の発動はもう少し絞りこめると読んでいるのであろう。しかし、「供給が需要を喚起する」のは医療制度の常であり、いったん制度が動き始めれば従来24条通報で処理されていたものも含めこの制度に流し込まれてくるかもしれない。審判の対象者数を年間300件とする前提そのものがすぐに崩れる可能性が高い。

1)指定入院医療機関について
 当面は、全国に約20ある国立療養所と精神科病棟を持つ国立病院の中から指定入院医療機関が選ばれることになるのだろう。都道府県知事が指定する措置病床とは異なり厚生労働大臣の指定となる指定入院医療機関の場合、自治体立病院が初動時から対象となる可能性は高くない。しかし、大阪のように背景人口が大きいにも関わらず受け皿となる国立医療機関を持たない自治体があることや、国立に設けた特別病棟がすぐに満床になった場合には、自治体立病院が指定入院医療機関となる可能性は高い。法案が国会を通過した場合、公布の日から2年以内に制度をスタートさせることが予定されているが、800床から900床を準備するという10年間の過渡的段階の受け皿については明確にされていない。

2)指定通院医療機関について
 厚生労働省が期待する病床回転は、退院後の処遇を援助ではなく監視に純化させたことで法案自体がその可能性を奪うことになる。指定通院医療機関及びそこで働く精神科医は社会防衛的機能と再犯に関する責任を課されることになるが、この間の日本精神病院協会の主張を見る限り、民間病院が自ら進んで指定通院医療機関になることは考えにくい。診療所の精神科医の場合は尚更であろう。結局、指定通院医療機関は自らの意思とは別にそれを拒否することができない医療機関、つまり国立と自治体立に限定される可能性が高い。

 自らの生活圏で治療を受ける権利の剥奪は、入院命令だけではなく通院命令においても起こりうる。通院命令は厚生労働大臣による医療機関の指定を伴うので、居住地から遠く離れた自治体立病院への通院が命じられ、通院のために転居するか、命令を遵守しないことによる再入院かの選択が迫られるかもしれない。通院命令の対象者は、身近に通院可能な精神科医療機関のなかった収容を中心とする30年以上前の状況に逆戻りさせられることになる。出口を閉じた法案によって、指定入院医療機関の必要病床数は時間の経過とともに膨れあがっていく宿命にあると言えよう。

3)精神保健判定医及び精神保健審判員
 精神保健審判員については、一部の「精神医学者」と立場上拒否することが困難な国立に勤務する精神科医を除くと、自ら進んで希望する精神科医はいないであろう。しかし精神保健判定医については少し事情が異なるかもしれない。杜撰な鑑定により医療の対象ではない事例を医療化することの問題を指摘して司法精神鑑定センター構想を打ち出した全国自治体病院協議会は、積極的に鑑定命令入院の受け皿となる選択をするかもしれない。 その際、精神保健判定医として鑑定に関与するか、「精神保健判定医と同等以上の学識経験を有する」という規定に依拠して鑑定に関与するかは判断が分かれるかもしれない。その場合、従来の司法精神鑑定とこの法案が求める鑑定と

は似て非なるもの
であることが重要な判断材料となろう。

 そして、入院の際には医療の要否という医療モデルがあてはまやすいのに対し、退院の際の判断は医療モデルとは全く異なるものであることを、その医師が認識しているか否かが、入院の要否についての判断を分ける可能性がある。

4)精神保健参与員と精神保健観察官
 精神保健参与員は「精神保健福祉士その他の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術を有する者」と規定されるが、精神保健福祉士本来の業務からすると「再犯防止」を目的とするこの制度に関与することは考えにくい。自らの意思とは別に、保健所や精神保健福祉センターに勤務する精神保健福祉士が、業務命令に近い形で精神保健参与員を選択させられるのではないか。精神保健観察官に至っては、全法務省労組の見解にあるように人材を確保することは極めて困難であろう。

5)措置診察及び精神科医療全般に与える影響
 25条通報を中心に措置診察に有形無形の影響があるかもしれない。検察官は対象行為に該当する場合には法案第33条1項に基づく申し立てを、対象行為に該当しない場合には精神保健福祉法25条に基づく通報を行うことになるが、2つの法の目的の違いを混同する事態は容易に起こりうる。いったん「再犯の防止」を精神科医療が引き受けた以上、25条に限らず24条警察官通報についても同様であろう。「自傷他害」の要件が「再犯のおそれ」に置き換えられ、従来以上に措置診察に携わる精神科医の上にプレッシャーとしてのしかかってくるだろう。

 こうした変化は外来治療も含め精神科医療全ての場面に影響を与えうる。病院・診療所を問わず、外来通院中の患者が何か事件を起こしたとすれば、「そのおそれ」を予見し得なかった精神科医に非難が集中することになり、精神科医の態度を防衛的にするだろう。かつて精神科医療にこれだけの関心が集中したことはなかったのではないか。この1年は、医療的観点から精神科医療の守備範囲を明確にする絶好の機会でもあったはずである。その好機に、逆の選択、すなわち再犯防止という社会防衛の役割を自らの内に引き受けようとすることは、自らの首を絞める行為である。日本精神病院協会がこの問題を精神科医療の中にではなく外に投げ返す姿勢を堅持していれば、事態は違う展開を示し得た。

 この法案が可決したとすれば、自らの利益と安全に拘泥するあまり精神科医療全体を誤った方向に誘導しようとした日本精神病院協会執行部と、専門性の確立と拡大に注目し細部の検討を怠った一部の司法精神医学者の責任は極めて大きい
 風の里あやのさんより・・・
 春ですね。皆様いかがおすごしですか?
年賀状、お便り、通信などを頂きながら返事も出せずに失礼ばかりしていますが、私は元気です。
 地元の佐敷干潟を守るために、地域の女性たちと、シオマネキにかけて「しあわせまねきの会」を立ち上げ、親子で参加できる楽しい観察会をしたりクリーン作戦をしたりと、自然の中で活動できることは、ありがたいことだと実感しました。

 経営しているお店「風の里」は、やっと増築工事が終了し、カフェレストランとして12月18日にリニューアルオープンしました。新たに仲間が二人加わり、おかげさまで毎日たくさんの方に喜んで頂いています。

 すこし軌道に乗り始めたころから、名護市長選の応援で名護通いをしましたが、悔しい結果となりました。やっと元気をとりもどし、さてこれからどう新しい展開をしようかと思っていた矢先に、あけぼの出版社長の古謝将嘉氏、沖縄戦の歴史研究家の久手堅憲俊氏と高江洲義一氏のお三方が、私を尋ねてわざわざ「風の里」に来てくださいました。

 どこかで「満月まつり」のことを聞いて何か一緒にできそうと思われたようです。またしても必然的な出会いのようで、すぐさま生き投合意し「風の里」で何度も話し合いを持ち、【アジアの国々へ展示用写真集『沖縄戦と基地』を贈る会】を立ち上げる運びとなりました。

 また、話し合いを重ねるうちに、古謝さんの提案で「お互いの知識や体験をもっとみんなでシェアし合えるようにする必要がある、それぞれの体験を皆でじっくり聞くための定例会を創ろう」ということになり、毎月第2金曜日・午後7時・「風の里」に集まる「風の会」を、4月からスタートすることになりました。

 そして、第4回「満月まつり」は韓国の鄭柚鎮さんともコンタクトをとりつつ開催日を今調整中です。今回は、再びこのような惨状を繰り返してはならないと、長年頑張ってこられた先輩方との協力体制が生まれ、一緒に実行委員会を立ち上げる事になりました。いつも目に見えない大きな力に助けていただいているような感じがありましたが、改めて感謝の気持ちでいっぱいです。

 やりたい事はたくさんあって、毎日時間が足りなくて、また明日頑張ろうなんていいながら、思っていることの半分もできていないもどかしさはありますが、日々充実している事は確かです。

 世界の状況を考えた時、暗澹(あんたん)たる思いに陥りがちだからこそ、深刻病にならないよう、できることをせいいっぱいやる事が大切だと私は思っています。皆様も日々お忙しい中ご奮闘なさっていることと思いますが、どうか、呼びかけ人または、賛同人になってください。

追伸 展示用写真『沖縄戦と基地』をご希望の方は、購入申し込みをなさる場合に、ぜひ「満月まつり」とお書き添えください。その場合は、収益のいくらかを「満月まつり」の運営資金に使わせていただく事になっていますので、ご協力よろしくお願い致します。
                                       シオマネキのしあわせまねき


「風の会」へのお誘い
 

 人はこの地上に降り立ち、この地上を去る時までに、何を観、何を感じ学び、どのような体験をし、どう考え生きるのでしょうか。

 人は生きてきた証として、何を残したいと願うのでしょうか。人類の存続が危ぶまれている現在、愚かな過ちを再び繰り返さない決意と、進むべき方向を誤らぬよう歴史の事実と対峙することが、いかに重要であることか。歴史を知識としてのみにとどめず、また記憶としてのみにとどめず、個的体験を共有し合い、継承することができるならば、それは貴重にして固有な全体史として、互いの生き方に確実に影響を及ぼすのではないでしょうか。

 共に生きる平和な時代を迎えるために、「風の里」では月例会として、毎月第2金曜日、午後7時から集う「風の会」を4月からスタートさせます。

 このささやかな集いが、混迷を極めた道すがらの、足元を照らす光りを見出す、よすがになればと願っています。

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